『おむすび』“歩”仲里依紗の中で再び動き出した真紀との時間 孝雄の心はいまだ復興せず

『おむすび』“復興”できない孝雄の心

 彼女が現れるのはいつも突然だ。そして彼女が現れると、いつも物語が大きく動き出す。『おむすび』(NHK総合)第41話では、結(橋本環奈)の姉・歩(仲里依紗)が神戸に帰還。阪神淡路大震災で犠牲となった真紀(大島美優)の死から立ち直れずにいる渡辺孝雄(緒形直人)の心に波紋をもたらす。

 3年前、家族との絆を取り戻したあと、東京で仕事を片付けたら福岡に戻ると言って糸島を去った歩。しかし、一向に帰ってくる気配はなく、全国の温泉地から付き人の佑馬(一ノ瀬ワタル)とのツーショット写真が愛子(麻生久美子)宛てに時々送られる程度だった。

 それも去年の2月にイタリアから写真が送られてきてからは連絡が途切れていたが、この度、ヘアサロン米田に突如姿を現す。久しぶりに現れた歩はボヘミアンスタイルで、どこかハリウッド女優のような風格も。ごく普通の中学生だった頃の歩しか知らない商店街の人たちにとっては驚愕だ。

 どうやら女優の仕事は辞めたようで、現在の彼女の職業は古着のバイヤー。全国を回っていたのもただの温泉巡りではなく、仕入れのためだった。中学の頃は親友の真紀の方がファッションに詳しかったが、福岡時代は伝説のギャルとして崇められていたくらいだから、もともとセンスはあるのだろう。バイヤーとしての才能を開花させた歩は価値のある古着に出会うため、世界中を飛び回っているそうだ。

 そんな彼女が帰国したのは、この第41話で初登場となった中学時代の同級生“チャンミカ”こと三花(松井玲奈)が店主を務める元町の古着屋に商品を卸すため。三花役の松井玲奈が朝ドラに出演するのは、2020年度前期の『エール』以来、約4年ぶりだ。同作では二階堂ふみ演じるヒロインの清楚で真面目な姉・吟を演じていたが、今回は原色の服に囲まれ、自身も派手な服とメイクで働くカリスマ店主に変貌を遂げている。ただ吟もおしゃれが好きだったので、そこは共通点かもしれない。

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 明るい性格で歩ともテンションが合う様子。久しぶりの再会で盛り上がる二人だが、「このあと行くん?」という三花から歩への問いかけで少しだけ空気感が変化する。歩と同級生ということは、震災で亡くなった真紀とも同級生だったということ。おそらく真紀のお墓参りに訪れるであろう歩に「ほなよろしく言うといて」と三花は目線を合わせずに伝える。たったそれだけの会話で三花にとっても、真紀は今でも心の中で生きている大事な友達だったということが伝わってきた。

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