『オクラ』が提示する白でも黒でもない正義 反町隆史「誰だって過ちは犯す」が沁みる
11月5日放送の『オクラ~迷宮入り事件捜査~』(フジテレビ系)第5話では、事件の背後に巨悪が姿を現した。
ホステスの不知火美佳(樋井明日香)が殺された事件の後編。前回ラストで何者かに襲われた利己(杉野遥亮)。千寿(反町隆史)が駆けつけたとき、そこに犯人の姿はなかった。美佳の元交際相手の新山(後藤剛範)は、2年前の事件現場で目にしたことを語り始める。
黒幕の正体に注目が集まったが、あっけなくその正体は明かされた。大物MCの鴻上(袴田吉彦)は美佳の客で、長男の壮太(石塚陸翔)が鴻上の声を覚えていた。けれども、このままでは逮捕できない。鴻上にはアリバイがあり、事件当日も選ばれたばかりの新総裁の地元から現地レポートをしていたためだ。
千里眼と証拠ねつ造に慣れてきたところで、刑事ドラマの王道であるアリバイ崩しが新鮮に映った。映像が前日に撮られたものであることを証明するのに、信号機の点検を使うマニアックさがツボだった。
第3話までは『オクラ』の世界観を提示する導入であり、本格的に物語が始動したのは2話仕立ての前週から。鴻上という“大物”が登場するも、すんでのところで逃がしてしまい事件は未解決のまま終わる。鴻上のバックには警察がいて、捜査が及ばないように手を回していたのだった。
さんざん怪しいと思わせて、やっぱり悪い奴だったと思わせたのが、千寿の同期で警視正の加勢(中村俊介)である。志熊亨(有澤樟太郎)を使って千寿や利己を見張らせたかと思うと、何者かから通話やSMSで極秘指令を受けるなどヒールっぽいオーラを全身から発しており、“いかにも”な悪役しぐさだ。しかし、本当にそれだけなのか? 加勢は亡くなった結城(平山祐介)のことを忘れておらず、千寿を牽制しつつ心配するなど、完全に黒と言いきれない。腹の底が読めないのが加勢という男である。
正義を証明するために嘘を用いるのが『オクラ』のユニークなところである。愁(観月ありさ)と新山の会話にもあったが、証拠のねつ造は違法捜査であり、法的に許されないことである。普通に考えると、悪に悪で対抗すると抗争がエスカレートして、関係者全員地獄へまっしぐらなのだが、本作の趣はやや異なっており、嘘というよりも“フェイク”に近い感触だ。たとえるなら、未解決事件というマイナスにねつ造という別のマイナスを加えることで、過去の闇から真実をすくい上げるかのようだ。