『アンチヒーロー』は今まさに観るべき一作だ 長谷川博己が北村匠海に与えた影響
『アンチヒーロー』(TBS系)のBlu-ray&DVD-BOXが10月30日に発売された。2024年4月期に日曜劇場枠で放送された、“アンチ”な敏腕弁護士・明墨正樹(長谷川博己)の活躍が常識を覆す、逆転パラドックスエンターテインメントだ。
たとえ、犯罪者である証拠が100%揃っていても無罪を勝ち取る、「殺人犯をも無罪にしてしまう」“アンチ”な弁護士。ヒーローとは言い難い、限りなくダークで危険な人物。しかしこのドラマを観た視聴者は、こう自問自答することになるだろう。「正義の反対は、本当に悪なのだろうか……?」
ドラマはある殺人事件で幕を開ける。第1話の冒頭で明墨が告げる「あなたを無罪にして差し上げます」の台詞は本作を象徴するシーンだ。そこから被告人を無罪にする取り組みを通して明墨の人となりが紹介される。いくつかの事件と公判を経て、物語は12年前の一家殺人事件に行き着き、法と正義の所在をめぐり社会を揺るがす事態に発展していく。
物語のキーになっているのは主人公・明墨のキャラクターだ。しかし“アンチヒーロー”明墨の意図するところはなかなか明かされない。回を追って時系列を遡る中で、視聴者は明墨の真の狙いに気づくことになる。繰り返し視聴に耐える映像クオリティと全話を通して仕組まれた伏線がそれを可能にしており、各話の考察が過熱したことは必然的であった。
放送時間の都合でカットとなった、本編の未公開カット46分復活版もBlu-ray&DVD-BOXでは収録。ストーリーを重視するためにそぎ落とされたキャラクターの心情や深みを感じることができるカットが入ることで、制作陣が目指したドラマ本来の完成度となっている。さらには別DISCに収録されている特典映像も満載だ。
長谷川博己らキャストのクランクインで始まるメイキング集には撮影現場の風景が収録され、出演者とスタッフが試行錯誤しながら各話の印象的なシーンを作り上げたことがわかる。最終話の法廷シーンでは、長谷川と野村萬斎による白熱した長台詞の応酬を別角度から堪能できる。