『マウンテンドクター』Snow Man 向井康二の哀愁漂う感情表現 軽装登山の問題にも言及
『マウンテンドクター』(カンテレ・フジテレビ系)第8話は、待ちに待った我らが真吾(向井康二)の回だった。歩(杉野遥亮)や典子(岡崎紗絵)の幼なじみで、激務で疲れた心と体を癒すオアシス、焼き鳥屋「しんちゃん」の店主である真吾は、れっきとした本作のレギュラー陣である。
ある日、離れて暮らす息子の圭吾(湯田幸希)が真吾を訪ねてくる。圭吾の相談は、みんなと山登りに行くこと。ただし圭吾は心臓の疾患を抱えており、母親の凛(冨手麻妙)は万が一の場合を心配している。居合わせた歩はMMTの受診を勧め、圭吾はカテーテル手術を受けることになった。
新たにMMTに加わった江森(大森南朋)の執刀で手術は成功。圭吾は晴れて山へ行けることになった。しかし、そこでアクシデントが発生。山道で会った軽装の登山者・天野(堀丞)が足を負傷し、急きょ歩が現場に駆けつける。その間、昆虫採集をしていた子どもたちはハチに襲われて刺され、その中には圭吾も。圭吾はアナフィラキシーショックを起こして倒れ、呼吸不全に陥るなど早急に医療処置が必要な状況だった。
我が子を送り出す親の立場からは、なかば不安が的中した形である。真吾と凛は、まさかこんな形で圭吾が病院に搬送されるとは予想していなかっただろう。特に真吾は、日頃、息子に愛情を示す機会がないだけに、圭吾が怪我したことに複雑な心境だったに違いない。くわえて、歩が目を離したすきに圭吾がハチに刺されたと知り、約束を破った親友に真吾は怒りを抑えきれなかった。持ち前のサービス精神旺盛なキャラでバラエティー番組でも活躍する向井康二の、気さくでユーモラスな一面とともに、バツイチの父親の哀愁と人生の苦みを感じさせる繊細な感情表現に胸を打たれた。
目の前の傷病者を救うため、一時的に自分の持ち場を離れる。そのことについて、江森は「医師としては正論だが、山岳医としては必ずしもそうじゃない」と指摘する。今回、適切な処置をしたことで圭吾は事なきを得たが、命の選別というシビアな選択を強いられる状況で、歩の甘さが取り返しのつかない致命的なミスを招きかねないことを、江森、そして真吾の言葉は語っていた。