橋本淳、若手屈指の名バイプレイヤーに 名だたる演出家たちから信頼される演技力
木曜日の深夜に放送されている『クラスメイトの女子、全員好きでした』(以下、『クラ好き』/読売テレビ・日本テレビ系)が面白い。本作は、盗作した小説で一躍人気作家となってしまった脛男(木村昴)が、中学時代に好きだったクラスメイトの女子たちとの思い出を回顧しながら、“真の作者”を探すストーリー。基本的にはコメディだが、人の欠点やコンプレックスを愛する主人公のフィルターを通した優しい世界観に心が温まる。
中でも個人的に“神回”だと思ったのが、脛男と中学のクラスメイト・杉浦くんとの思い出が描かれた第4話。2人は一緒に給食を食べる仲だったが、杉浦くんが「女の子より男の子が好き」と脛男に告げた直後に学校をやめてしまい、それっきりになっていた。そんな杉浦くんの大人になった姿を演じたのが、橋本淳だ。多くの人の涙を誘った名演について語る前に、改めて橋本のこれまでを振り返りたい。
橋本は高校生の頃に所属事務所アミューズのオーディションを受け、見事合格。俳優デビューの翌年には、早くも特撮ドラマ『魔法戦隊マジレンジャー』(テレビ朝日系)で主役を飾る。撮影当初、橋本は17歳で、レッド役としては当時シリーズ最年少だった。その翌年にも『半分の月がのぼる空』(テレビ東京系)で主演を務めており、俳優としては華々しいスタートダッシュと言えるだろう。
そんな橋本のエポックとなったのが、NHK連続テレビ小説『ちりとてちん』への出演だ。貫地谷しほり演じるヒロインの弟・正平を演じた橋本は、同作で父親役の松重豊をはじめとする多くの舞台役者に出会った。複数のインタビューでも語っているように、彼らに影響を受けた橋本は以降、めまぐるしいペースで舞台に出演。第22回読売演劇大賞で3冠に輝いた『ヒストリーボーイズ』(2014年)、第59回岸田國士戯曲賞受賞作『トロワグロ』(2014年)、その年の演劇賞各賞を総なめにした『キネマと恋人』(2016年)など、栄誉ある賞を受賞した出演作の多さは彼の貢献度の高さを物語っている。ゆえに、宮田慶子、中屋敷法仁、山内ケンジ、鈴木勝秀、栗山民也といった名だたる演出家たちから信頼を寄せられ、再ラブコールも多い。
特に、劇団た組を主宰する加藤拓也の作品には過去何度も出演しており、2022年に上演された『もはやしずか』には企画から携わった。同作で橋本が黒木華と演じたのは、長い不妊治療の末に子供を授かるも、出生前診断で障害がある可能性を突きつけられた夫婦。筆者も実際に劇場で観劇したが、二人が紡ぎ出す、すれ違う夫婦の会話劇が圧倒的なリアリティで胸に迫ってきた。
こうした舞台で研鑽された力は映像作品でも活かされており、映画『月極オトコトモダチ』で飄々としたレンタル彼氏ならぬ、“レンタル友達”を演じた橋本はMOOSIC LAB 2018で最優秀男優賞を受賞。30歳で引きこもりの男性を演じた映画『よっす、おまたせ、じゃあまたね。』でもMOOSIC AWARD 2023でベストアクター賞に輝いている。
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