『【推しの子】』のハイレベルな演出に驚き 黒川あかねVS有馬かなを際立たせる“仕込み”
『【推しの子】』第18話「太陽」は、黒川あかねと有馬かなという2人の主要キャラクターの演技力を対比させ、今後の展開を巧妙に示唆する構成となっていた。ある意味では過去回想をメインとすることで第19話への土台を作るエピソードとも言える回でもあるが、その“仕込み”の丁寧さに驚かされた。
Aパートの冒頭で画面に最初に映し出されるのは、鮮烈なスポットライト。そして、そのスポットライトが照らすのは他でもない有馬かなの姿である。この構図は、かなが本エピソードの中心人物であることを暗示し、物語の焦点が彼女に収束することを予感させる効果的な演出だ。
さらに、この冒頭のシーンは有馬かなの卓越した“受け”の演技力を印象づける。他の出演者のセリフが効果音と被ってしまう場面で、かなが即興でそれをカバーする様子が描かれるからだ。これまでも、共演者の演技を瞬時に解釈し、それを活かしながら自身の演技を展開する能力が評価されてきた有馬。その即興力と臨機応変さが本番の舞台で強調され、彼女の演技の柔軟性が視聴者に強く印象づけられたのではないか。
そんなかなを、スポットライトが文字通り「照らし出す」ことで、皮肉なことに受けの演技によって彼女の才能が「輝いている」というメタファーも強調される。後に描かれる受けの演技から有馬を引き摺り出したい黒川あかねとの対比がより鮮明になり、2人の演技スタイルの違いや、これから繰り広げられる“スポットライト”を巡る競争関係への伏線としても機能しているのである。
『【推しの子】』第18話は、かなとあかねの幼い頃の出会いを描いた、物語の重要な転換点でもある。特に印象的なのは、オーディションに挑む幼少期のあかねの体験を通して描かれる、自販機前でのやりとりだ。
自販機の前で制作側の男性と出くわしたあかねは、彼女をかな本人と間違えて気遣った彼に「もう合格者はかなに決まっている」という言葉をかけられる。この瞬間、男性が飲み物を買うと同時に、ボタンが赤く光り「売切」の表示に変わるのである。一見何気ない描写だが、あかねが目指す場所が既に「売り切れ」という厳しい現実を、目で見て分かるように伝える巧みな演出がSNSでも話題となった。