『【推しの子】』第17話は2024年屈指の神回 メルトの“覚醒”に『ダイ大』ポップを思う

『【推しの子】』第17話は2024年屈指の神回

 毎週、「ほとんどの作品を観ている」アニメライター・はるのおとによる週刊連載「【アニメ】神回・オブ・ザ・ウィーク」。8月5日から8月11日に放送された分から注目の“神回”をピックアップ!(編集部)

 『負けヒロインが多すぎる!』のエンディングが先週の第5話放送分から変わりました。その内容が第4話までのものとは路線を変えながらも、またとても印象的な色使いかつ情感あふれるもので素晴らしいものでした。

アニメ「負けヒロインが多すぎる!」ノンクレジットED映像【CRAZY FOR YOU】

 で、アニメのエンディングは同じ1クールものでもスタイルはさまざま。基本的には1クールで1本ですが、『チェンソーマン』のように毎回変わったり、『負けヒロインが多すぎる!』のように数話単位で変わったりします。それぞれに意図があり視聴者も好みがあるでしょうが、個人的には頭にしっかり刻まれやすい1クール1本で、かつ特別な話のときだけ特殊エンディングというのが一番嬉しいなと。

 というわけで、今回はまさに“乾坤一擲”なエピソードから紹介します。

ポップのメガンテのシーンってみんな好きですよね『【推しの子】』第17話

【推しの子】第十七話『成長』WEB予告

 この連載を書いていて、できるだけフラットに全作品を評価しようとしているのですが、原作を読んでいる作品はどうしても驚きが減ってやや評価が辛くなってしまうところがあり。それこそ『響け!ユーフォニアム3』第12話クラスの見事な原作改変をしてくれたら別ですが、2.5次元舞台『東京ブレイド』が開幕する『【推しの子】』第17話はまた別の路線で素晴らしかった。

 そもそも2.5次元舞台をアニメでどう見せるかも注目ポイントでしたが、序盤からワイヤーアクションなどの丁寧な描写だけでなく、ステージを正面から見据えるカット(=観客と同じ視点)を随所に挟むことで“それっぽさ”を感じられただけで感心していたのですが、この話の見どころは中盤から。第1期で展開した劇中ドラマでの演技が酷評されたモデル兼役者であり、『東京ブレイド』ではキザミというキャラクターを演じる鳴嶋メルトがメインとなる話でした。

 このメルト、ドラマの本筋には絡まず、相変わらず演技力も周囲の一流と比べると劣るという扱い。しかしBパートから彼の過去や第1期のドラマ以降の努力が回想シーンとして描かれ、急速にキャラが立てられていきます。そして主人公・アクアのアドバイス通り、見せ場となる1分ほどの敗北シーンの稽古に注力し、キザミと情けない自身を重ねることで感情演技を成立させ、その場面では実力派の役者や観客も大いに認めるほどの演技を見せる……という筋立てなのですが、この“覚醒”シーンでのアニメーションが息を呑むほど見事な内容で。こればかりは本編を観ていただきたいところですが、いやあ、今期どころか、今年を代表するアニメーションのひとつになるのでは。

 そもそも『ダイの大冒険』のポップや『GS美神 極楽大作戦!!』の横島君……だと例えが古いですが、同じく演技もののマンガ『アクタージュ act-age』の星アキラみたいな、三枚目キャラや格が落ちるキャラがここぞという場面ですごい活躍を見せるのが嫌いな人はいないはず。『【推しの子】』におけるそれにあたるエピソードに、ものすごく力を入れてくれてイチ原作ファンとしては感謝するばかりだし、次話からの「2.5次元舞台編」の山場に対する期待がさらに高まる1話でした。

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