『虎に翼』優未「私のせいにしないでね」に感じる「はて?」の精神 航一の距離感が絶妙

『虎に翼』優未が受け継ぐ寅子の「はて?」

 日本が敗戦する可能性が高いと分かっていながら、戦争を止めることができなかった航一(岡田将生)。その想像を絶する苦しみに、寅子(伊藤沙莉)は寄り添い、一緒にもがいていくことを誓った。『虎に翼』(NHK総合)第91話では、航一と佐田親子の交流が始まる。

 週末、航一が麻雀を教えに寅子の家へやってきた。航一の来訪を誰よりも楽しみにしていたのが、優未(竹澤咲子)だ。寅子が思わず嫉妬してしまうほど、航一にすぐ心を開いた優未。今回も前日から心を躍らせ、当日は自ら航一に家族の写真を見せた。航一は「優未さんにはお兄さんがたくさんいるんですね」と微笑む。優未が航一を好きなのは、自分を子供扱いしたり、無理に距離を縮めようとしたりしないところなのかもしれない。航一に「仲良くしなきゃ」みたいな義務感がないから一緒にいても疲れないのだろう。

 航一も苦しみを吐き出せたことで以前より雰囲気が柔らかくなり、寅子と優未に亡くなった妻と2人の子供たちと撮った写真を見せた。3人の間によい空気が流れる中、航一が来訪していることを知った太郎(高橋克実)と次郎(田口浩正)が寅子の家に押しかけてくる。寅子がもがいた結果、関係性が良好になったのは良いことだが、優未の前で「年はいってても男と女。変なうわさ立てられてもあれでしょ」と相変わらずデリカシーにかけた発言をする二人。そんな彼らから聞いたのか、寅子は後日、深田(遠山俊也)から高瀬(望月歩)と小野(堺小春)“も”いい感じなのだと、にやけた顔で話しかけられる。

 自分たちにそのつもりはなくとも、周りは好き勝手に想像する。そうなってくると、気になるのは優未のことだ。寅子は「優未が嫌な気持ちになるようなことはしない」と先んじて伝えるが、「お母さんが誰のことを好きでも嫌いでもいいけど、私のせいにしないでね」とため息まじりに言われてしまう。嫌な思いをさせることはしない。それは一見正しいことに思えるが、たしかに後から「あなたのせいで」とか、「あなたのために」と言われたら困る。多くの人が善意として受け取ってしまいがちなところを、わずか小学生でそうやってしっかり主張できるのはすごいことだ。寅子はそんな優未の中に花江(森田望智)やはる(石田ゆり子)を感じるが、筆者は「はて?」とあらゆることに違和感を持ってきた寅子のスピリットを優未が受け継いでいるように感じる。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「リキャップ」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる