黒沢清監督作品の中で一番怖い45分間 『Chime』を観たら鶏肉調理がしばらくできない

黒沢清監督作品の中で一番怖い『Chime』

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は鶏胸肉スムージーを味わいたい石井が黒沢清監督作『Chime』をプッシュします。

『Chime』

 異常気象と言ってもいいぐらいとんでもなく暑すぎる日が続いています。そんな暑すぎる7月末から8月初週のこの1週間、私の心に宿ったのは鶏肉でした。なぜ鶏肉なのか。観た方なら大いに頷いてくれるでしょう。Netflix恋愛リアリティシリーズ『ボーイフレンド』と黒沢清監督作『Chime』のことです。

 『ボーイフレンド』は、日本初となる男性同士の恋愛リアリティショー。サブスク時代になってからというものの、恋愛リアリティショーは数多作られてきましたが、こんなに美しいと思った番組は初でした。決してたくさんの恋リア番組を観ているわけではないですが、誰も悪者にならず、視聴者も嫌な気持ちにならず、人間愛にあふれた作品があっていいのかと驚いたものでした。出演者の皆さんの魅力はもちろん、音楽に映像、番組ロゴなど、制作者にセンスがいい人しかいないと断言できる素晴らしさ。まだ未見の方は騙されたと思ってぜひ観てほしいです。

 そんな『ボーイフレンド』において、最重要(?)とも言えるキーワードとなっているのが鶏胸肉。未見の方はまったく意味がわからないと思いますが、観た方の90%は鶏胸肉に爆笑し、泣いたと思います。私もスーパーに行くたびに鶏胸肉の値段をチェックしようと思わずにはいられませんでした。最終話の読後感は、近年のエンタメ作品の中でも屈指の余韻です。

 と、ここまで完全にただの『ボーイフレンド』話になっていますが、鶏胸肉で染まった気持ちを、いい意味(?)でぶち壊してくれたのが黒沢清監督作『Chime』です。セルフリメイク作『蛇の道』に、菅田将暉主演『Cloud クラウド』とこの短期間に黒沢監督新作が立て続けに観られる状況に、嬉しい悲鳴をあげている映画ファンも多いかと思います。

 長編2作に挟まれるように公開されているこの『Chime』。ほぼすべての黒沢清監督作品を観ていますが、正直今までのどの作品よりも一番怖かったです。主人公は、吉岡睦雄さんが演じる料理教室の講師として働いている松岡。この松岡の行動を観客は追っていくうちに、どんどん嫌な気持ちになっていく……というのが本作の大まかな流れです。

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