【新連載】黒崎煌代の90sシネマクロニクル 第1回『リアリティ・バイツ』Z世代は共感必至?

『リアリティ・バイツ』にZ世代は共感必至?

 『リアリティ・バイツ』を観る上で、お勧めしたいのはアメリカの歴史を知るということ。これはアメリカ映画全般に言えることだと思いますが、その年は誰が大統領で、民主党と共和党のどちらの政権か、どんな映画が公開されて、何が社会問題としてあったのか、円相場はいくらくらいだったのか、そういった背景を調べてみるだけでも映画の見方、楽しみ方は変わってきます。劇中でヴィッキーはHIV・エイズの感染を心配していますが、同じ1994年に公開された『フォレスト・ガンプ』でもHIV・エイズの話題は出てくるんです。当時は人工妊娠中絶の是非について問われ始めた時期で、“その当時の”中絶反対派は暴徒化していったんですよね。そのことを揶揄する「あの店は中絶反対派よ」というセリフがこの『リアリティ・バイツ』にも出てくるんですけど、その一言が理解できるかで面白さはまた変わってくると思います。

『リアリティ・バイツ』写真:Album/アフロ
『リアリティ・バイツ』写真:Album/アフロ

 芝居に注目すると、イーサン・ホークの印象的な演技がいくつかあります。ガソリンスタンドのフードマートでのシーンで、店内にザ・ナックの「My Sharona」がかかり、ほかの3人がはしゃいでいる時に、トロイは店員に向かって口角を2回パパッと上げるんです。そのイーサン・ホークの演技は、自分も取り入れてみたいなと思いました。あとはトロイが電話をかけて受話器から「ハロー」と聞こえてくるんですけど、何も答えずにガチャッと切って椅子に座る、その座り方がよかったです。普通に座るのではなく、ダラーッと座るんですよ。身体の使い方一つで、名シーンは生まれるなと思います。

 どう座るかまでの演出をつける監督に対して何も言わない監督もいますが、ベン・スティラーは割と自由にやらせてくれるタイプなのではないかと思います。僕も監督と相談し合いながらよりいい芝居をできるように、自分だけにしか表現できないものを生み出していきたいですね。

黒崎煌代(写真=池村隆司)

■作品情報
『リアリティ・バイツ』
出演:ウィノナ・ライダー、イーサン・ホーク、ジャニーン・ガラファロー、スティーヴ・ザーン、ベン・スティラー
監督:ベン・スティラー
脚本:ヘレン・チャイルドレス
日本公開日:1994年12月10日
写真:Everett Collection/Album/Photofest/アフロ

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる