宮藤官九郎は一体どこに向かうのか? 『新宿野戦病院』の“雑さ”の裏側にある平等
また、加害者と被害者が同じ場所で手術される展開や、横山の言う「こんなに苦しんでいる人を前にして外科とか内科とか言ってらんないよ。やるかやらないか患者の状態が決めることで医者が決めるなんて傲慢でしょう」(パパ活とギャラ飲みの違いを語ったセリフの上位互換であることがポイント)セリフなども、「平等」を見事に描いている。
平等に関して、アメリカと比べたら日本のほうがましのはず。とくに、国も年齢も性別も関係ないお金を持っている人も持ってない人も混ざっている歌舞伎町は真に平等な街なのか。ここはある意味、戦場なのか。そこで誰も彼をも受け入れてきた「赤ひげ」の病院はビジネスに敗北しそうで、そこに現れたヨウコは新たな赤ひげになり得るのだろうか。
ちなみに“赤ひげ”とは、4月期にテレビ東京系で放送されていた宮藤官九郎脚本作品『季節のない街』(ディズニープラス)の原作者・山本周五郎の大人気作のひとつ『赤ひげ診療譚』の主人公。ドラマや映画にもなって、日本人に愛された人情派の医者である。NPO法人「Not Alone」が手を差し伸べる人たちは『季節のない街』で描かれた人たちのようで、聖まごころ病院は『赤ひげ診療譚』のようで、と山本周五郎のオマージュを感じさせつつ、ヨウコは、藤井風や千鳥のノブなどの人気で注目される岡山弁だったり、出演者は朝ドラ『虎に翼』(NHK総合)の出演者が多く、「平等」という題材も『虎に翼』と同じであったり。キャッチーなところをうまく押さえながら、宮藤官九郎はどこに向かっているのか。
演出は河毛俊作。フジテレビでヒット作を多く手掛けてきたベテランだ。23年前、宮藤がフジテレビで書いた『ロケットボーイ』の演出も担当していた。最近は映画『仕掛人・藤枝梅安』を監督している。ジャズカフェで浸る啓介や、ヨウコの母であるジャズ歌手のリツコ(余貴美子)、元反社で行き場を失っている老人・加地(花王おさむ)などのどこか乾いた描写は河毛色だろうか。フジテレビの宮藤ドラマはちょっとハードボイルドな大人のコメディになるかもという気がしている。
■放送情報
『新宿野戦病院』
フジテレビ系にて、毎週水曜22:00~22:54放送
出演:小池栄子、仲野太賀、橋本愛、平岩紙、岡部たかし、馬場徹(ドランクドラゴン)、塚地武雅、中井千聖、濱田岳、石川萌香、萩原護、余貴美子、高畑淳子、生瀬勝久、柄本明ほか
脚本:宮藤官九郎
プロデュース:野田悠介
演出:河毛俊作、澤田鎌作、清矢明子
制作:フジテレビ ドラマ・映画制作部
制作著作:フジテレビジョン
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