仲野太賀が今度は“夜のお茶の間”へ 『虎に翼』から『新宿野戦病院』へ演技のグラデーション
番組公式サイトの人物相関図には、“父譲りの金もうけ主義者”や“チャラくいけすかない典型的な気取り屋タイプ”などと記されている。さらには、“趣味は港区女子とのギャラ飲みで、お金を使って派手ににぎやかな世界に生きている”とも……。別にどれも悪いことだとは思わないが(そもそもまだ享は私たちの前に姿を現していない)、『虎に翼』のあの心優しい佐田優三の影はなさそうである。
しかし言うまでもないが、これこそが俳優の仕事。何らかの作品で演じ好評を博したキャラクターを私たち観客/視聴者の脳内から完全に消し去ってみせてこそ、演技者としての真の力量が感じられるというもの。むしろどれくらい異なるキャラクターを立ち上げてくるのかに期待だろう。仲野が出演したクドカン作品としては『季節のない街』(ディズニープラス)での好演も記憶に新しいが、あのタツヤという好青年とも享はまったく違うタイプの人間のようなのだから。
2024年に公開された仲野の出演映画でいうと、『熱のあとに』で演じた小泉健太はどこまでも真っ直ぐな人間で、『四月になれば彼女は』で演じたタスクはやや掴みどころのないキャラクターだった。演じているのはすべて仲野太賀というひとりの俳優なのだから、各キャラクター同士に重なりを感じる瞬間があってもおかしくはない。けれども彼が演じるキャラクターたちには、非常に大きな振れ幅があり、その間にはあまりにも豊かなグラデーションがある。どことなく似た印象を受けるキャラクターがいたとしても、仲野の演技には“焼き増し”のようなものがまったく感じられない。その理由としては演技のグラデーションの豊かさが関係しているのだと思う。
高峰享とは、仲野の演じてきた数多くのキャラクターたちの中で、どのようなタイプに分類される存在なのだろうか。前述した特徴からするとあまり好印象は持てないが、しかし彼はヨウコとの出会いによって、その生き方まで変化していくらしい。ということはつまり、『新宿野戦病院』の中でも仲野は演技のグラデーションで魅せてくれるのだろうといえるわけだ。その変化は繊細なものなのか、はたまたアクロバティックなものなのか。“仲野太賀=高峰享”の登場が待ち遠しい。
■放送情報
『新宿野戦病院』
フジテレビ系にて、7月3日(水)スタート 毎週水曜 22:00~22:54放送
※初回15分拡大(22:00~23:09放送)
出演:小池栄子、仲野太賀、橋本愛、平岩紙、岡部たかし、馬場徹(ドランクドラゴン)、塚地武雅、中井千聖、濱田岳、石川萌香、萩原護、余貴美子、高畑淳子、生瀬勝久、柄本明ほか
脚本:宮藤官九郎
プロデュース:野田悠介
演出:河毛俊作、澤田鎌作、清矢明子
制作:フジテレビ ドラマ・映画制作部
制作著作:フジテレビジョン
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