M・ナイト・シャマラン監督が明かす“映画”の醍醐味 『オールド』で“新しいフェーズ”へ

シャマラン監督が『オールド』を語る

 新作を発表するたびに“ネタバレ厳禁”という謳い文句とともに大きな話題を集めるM・ナイト・シャマラン監督の最新作『オールド』は、バカンスを過ごすために美しいビーチを訪れた家族たちが不可解な現象に見舞われる様子を描いた、“時間”をテーマにした“タイムスリラー”だ。新型コロナウイルスによるパンデミック以降に製作が開始され、撮影もコロナ禍で行われた本作について、シャマラン監督に話を聞いた。

「どの作品も“運命”というものを描いている」

ーー今回の作品はフレデリック・ピータースとピエール・オスカー・レヴィとのグラフィック小説『Sandcastle』にインスパイアされたそうですね。この小説の出会いと映像化に至った背景を教えてください。

M・ナイト・シャマラン(以下、シャマラン):僕の娘たちが、父の日にプレゼントとしてたくさんの本をくれたのですが、その中の1冊が『Sandcastle』だったんです。読み始めたらすごく映画的で、何よりもコンセプトの力が大きかった。物語の中で超常現象のようなことがどんどん起こっていくんです。リアルライフでは時間はゆっくり進むけれど、私たちも同じようなことを経験していると思ったんです。

ーー時間という概念や老いること、そして家族や恋人など大切な存在に想いを馳せるような作品だと感じました。監督自身、こういったテーマにはもともと興味があったのでしょうか?

シャマラン:はい、その通りです。自分が感じていることや考えていること、それがそのときの映画に反映されやすいところがあります。例えば、仕事をする上で何か葛藤があったり、あるいはいつか来る自分の死に思いを馳せているとき、自分の親が年齢を重ねてきているなと感じたとき……そういった自分の考えていることが自分の作品の中に登場してくるので、そういうところがあるのかもしれません。自分の作品を客観的に観ると、どの作品も“運命”というものを描いているように思います。ただ、それは宗教的な運命ではない。いつも僕が感じるのは、一番の悪夢っていうのは、自分の家族に何か脅威が襲い掛かること。なので、そこから映画やストーリーが生まれてくることも多いんです。

ーーキャスティングや撮影など、映画の製作はコロナ以降にも行われたそうですね。これまでの映画作りとは全く違うものになったのではないかと思うのですが、実際はどうでしたか? 具体的に最も苦労したこと、逆にメリットに感じられたことがあれば教えてください。

シャマラン:良いところと悪いところ、その両方があったと思います。コロナのおかげで自分のキャリア史上最も大変な作品になったのは間違いありません。ただ、コロナ禍だからというだけではなく、今回は全て屋外、ビーチで撮影を行ったので、“自然の中での撮影”というのもすごく苦労したところでした。2カ月くらいビーチで撮影をしたんですが、僕は今までそれほどの時間をビーチで過ごしたことがなく、どんな自然の影響があるかを考えたこともなかったので、潮の満ち引きや嵐の影響が本当に大変でした。

ーーそれは大変ですね……。そこに加えてコロナ禍が。

シャマラン:コロナ禍ということで、撮影はかなり緊張したものになりました。フィルムで撮影したんですが、今はロスとニューヨークでしかそのフィルムを扱うことができないので、仮にどちらかの会社が休業みたいなことになったら、映画としては大問題になっていたはずです。幸いそのようなことは起こりませんでしたが……。撮影自体はホテルを貸し切って行っていたのですが、もし誰かが陽性になってしまったら、撮影をストップしなければいけませんでした。今回の映画はとても小さい規模の作品だったので、もし撮影が止まったりしたら予算的に大変なことになってしまう。こちらに関しても幸いそのようなことにはなりませんでしたが、いろんな意味で大変な経験をした作品になりました。

ーーガイを演じたガエル・ガルシア・ベルナルは、母国メキシコの映画はもちろん、ハリウッド映画からアート系まで多岐にわたる作品で様々な役柄を演じています。彼との共同作業はいかがでしたか?

シャマラン:ガエルとは以前、別のプロジェクトで本当に仲良くなって、いろいろな話をしていたんです。すごくチャーミングな人でありながら、役者としては、自分を閉じ込めるというよりは、いろんなものに対してオープンでいられる。ドラマチックな役をやっていても、シリアスな役をやっていても、どこかですごく人を楽しませてくれて、多くの人の共感を呼ぶ役者だと思います。今回彼は、僕のためにオーディションまでしてくれたんだけど、僕は彼と一緒に仕事をしたいと思っていたし、特に今の状況下でメキシコ人の主役を据えた場合、皆さんに共感してもらえるかどうか、というのも、2人がやりたかったことでした。実際、多くの方々が共感してくれているので、すごく嬉しく感じています。

ーーアレックス・ウルフやトーマシン・マッケンジーら若手キャストの好演も非常に印象に残りました。アレックス・ウルフは『ヘレディタリー/継承』や『ジュマンジ』シリーズ、トーマシン・マッケンジーは『ジョジョ・ラビット』や『ラストナイト・イン・ソーホー』など話題作への出演が続いていますね。

シャマラン:みんなオーディションから選んでいるんですが、僕はすごく運が良くて、何かしら特別なものを持っている才能ある人たちとオーディションで出会って、彼らのような“これからの人”を起用することが多いんですよね。オーディションで会ったときに、まるでその人にスポットライトが当たっているような感じがするんです。トーマシンもアレックスも、オーディションで演技を見て「誰だこの人は!」と思わせてくれるようなものを持っていました。エリザ(・スカンレン)もそうでしたね。“次の世代の才能”に巡り合うことができているのは、すごく喜ばしいことです。

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