『くる恋』公太郎さんがたまらない! フィクションをリアルな世界にする瀬戸康史の説得力
めるること生見愛瑠が主演を務めるラブコメミステリー『くるり~誰が私と恋をした?~』(TBS系)が最終回を迎える。GP帯の連続ドラマ単独初主演となった生見が、その実力と華をいかんなく発揮している本作。同時に、今年芸能界デビューから20年目を数えた瀬戸康史演じるフラワーショップの店主・公太郎の声、佇まい、空気、わずかな表情の変化に、多くの視聴者が引き込まれている。瀬戸には、フィクションの世界を、瀬戸の演じる人物のいるリアルな世界として、そこにあるものとして成立させる力がある。
桜の舞う夜に事故で記憶を失った、生見演じる緒方まことが、“本当の自分”を見つけていく本作。これまでに、それぞれ自称、元カレ・唯一の男友達・運命の相手を演じる瀬戸康史、神尾楓珠、宮世琉弥の全員の自称が“嘘”だったことが分かってきたが、物語が進むなか、まことが公太郎に惹かれていったのは明らかだった。それは公太郎のキャラクターもあるものの、瀬戸が演じていることが大きい。
コンプレックスを超えて、役者として豊かに
1988年5月、福岡県生まれの瀬戸は、今年36歳。2005年に芸能界デビューを飾った。「テニミュ」ことミュージカル『テニスの王子様』、『仮面ライダーキバ』(テレビ朝日系)、ドラマ『恋空』(TBS系)と順調に作品を重ねていく。当初より、端正で甘いルックスが目を引いた。愛くるしい瞳に、涙ぶくろ近くのほくろ、口角の上がった口元、時期により体も見事に鍛えてくる。そしてなにより、見た目とのギャップがさらに魅力的で、こちらの心にすっと入り込んでくる魅惑的な低音ボイスを持つ。
泥棒から“かけがえのない”存在に 『まんぷく』でいま絶好調な瀬戸康史
朝ドラ『まんぷく』(NHK)にて、萬平(長谷川博己)の心血を注ぐラーメンづくりに対し、ヒロイン・福子(安藤サクラ)に次ぐサポータ…
近年も、主人公夫婦に次ぐ存在としての活躍を見せた、NHK連続テレビ小説『まんぷく』、信念を内に秘めた産婦人科医院院長を演じた『透明なゆりかご』(NHK総合)、切ないほどまっすぐな青年を演じ切った『パーフェクトワールド』(フジテレビ系)、とんでもエンタメ大作に染まり切った『ルパンの娘』(フジテレビ系)シリーズ、等身大の姿を見せた『男コピーライター、育休をとる。』(WOWOW)、たじろぎ、揺れる古本屋の店主を演じた映画『愛なのに』など多くの作品を重ね、声優としても『アリスとテレスのまぼろし工場』で力を発揮してみせた。舞台出演も続けており、昨年も三谷幸喜が生んだ二人芝居『笑の大学』を内野聖陽と成功させたばかり。
また2011年からNHK Eテレで続いている『グレーテルのかまど』での姿がとても自然で、好感を与えている。
瀬戸は、過去に幾度も自身の「かわいらしい顔立ちがコンプレックスだった」と口にしているが、コンプレックスがあったゆえか、さまざまな役と作品を経験したいま、役者として、とても豊かな姿を見せてくれている。
そんな瀬戸には、そこの場に馴染む圧倒的な力があるように思う。逆の見方をすると、その場、空間を、自分の世界にしてしまう。さらに言えば、フィクションである世界を、瀬戸の演じる人物の生きるリアルな世界として、そこにあるものとして、成立させる。『くる恋』の公太郎でいえば、瀬戸とあのフラワーショップ、エプロンの馴染み方、フィット感は尋常ではない。幼稚園児の美緒ちゃんが「私の推し」と通うのもうなずける。カッコよすぎて「あんな店長いないだろ」とも思いつつ、それを瀬戸・公太郎の“フィット感”が上回る。フラワーショップ「フルールスタイルコレクション」は存在し、「あそこに行けば公太郎さんが、あのエプロン姿で迎えてくれる!」と思わせる説得力がある。