瀬戸康史が生み出す愛すべき“トキューサ” 『鎌倉殿の13人』イチの癒やしキャラに

瀬戸康史、トキューサの愛すべき魅力

 残す放送も5回となったNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』。主人公の北条義時(小栗旬)がダークに、シビアな決断をしていくほど息子である泰時(坂口健太郎)は反発し、姉の政子(小池栄子)も覚悟を決めて自分の考えを主張し始めた。源実朝(柿澤勇人)の後継者問題においても義時は泰時と政子と意見が対立。実朝の気持ちを尊重しようとする泰時や政子に対して、義時は苛立つ。そんなギクシャクした雰囲気で一際コミカルな持ち味を発揮し、愛らしい笑顔で場を和ませるのが、義時の弟の北条時房(瀬戸康史)だ。

北条時房(瀬戸康史)

 2代目鎌倉殿の頼家(金子大地)が存命の頃、蹴鞠の指南役だった平知康(矢柴俊博)に球筋が真っすぐで邪念がないと褒められるほど蹴鞠が得意で無邪気な時房。時連から時房に改名するように奨めたのも平知康だった。

 ちなみに、時連から時房に改名したのは第30回「全成の確率」。第30回では、比企と北条の権力争いに巻き込まれて源頼家への呪詛を行った阿野全成(新納慎也)が窮地に陥るさまが描かれた。そんなシリアスな回において、ここでも視聴者を和ませたのが“トキューサ”だ。父、時政(坂東彌十郎)の館を訪れ、「じつはわたし、名前を変えました。鎌倉殿より時房という名をいただきました」と報告すると、時政の妻・りく(宮沢りえ)が「トキューサ?」と聞き間違えた。それがトキューサの始まり。

 京から鎌倉に来た蹴鞠の師匠に球筋の良さを褒められ、改名まで奨められ、時房はそれらをすんなり素直に受け入れた。実朝が「大御所になる」と言ったのを「おおごと?」と聞き間違えたのもご愛嬌。政子は次の鎌倉殿を決める話し合いのため上洛する際、源仲章(生田斗真)の「お伴いたしましょう」という申し出を少し食いぎみに「結構」と却下。一人だと心細いと言ってお伴に誘ったのが時房だった。

 後鳥羽上皇(尾上松也)は慈円(山寺宏一)から、時房が「鎌倉一の蹴鞠の名手との噂」と聞き、興味を抱く。時房が院御所の庭でぼんやりしていると、足元に鞠が転がってくる。そこに姿を見せたのが後鳥羽上皇で、互いに華麗な蹴鞠の技を見せつけあったのだが、馴れ馴れしい時房の態度に一瞬ご立腹のようだった上皇様。慈円ほか、お付きの者が現れ、上皇の肩を軽くどついた時房は、その場にひれ伏すしかなかった。

 「トキューサと申したな」と上皇に呼ばれ、「トキューサでございます!」と即答する時房。上皇は「いずれ、また勝負しようぞ。トキューサ」と時房を気に入ったのか、トキューサという呼び方を気に入ったのか。最後はご機嫌のご様子で、実朝の後継者として息子の頼仁親王を鎌倉に送ることを決めていた。

 かつて朝廷に仕え、鎌倉で知り合った蹴鞠の師匠のもとで技を磨き、“トキューサ”と上皇に気に入ってもらえるのも時房が強運であることの証明かもしれない。

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