『虎に翼』“地獄”に戻ってきた理由を再確認する寅子 花岡の死が問いかける“法とは何か”

『虎に翼』寅子が“地獄”に戻ってきた理由

 夜遅く、久藤から差し出されたバーボンよりもイチゴジャムの乗ったクラッカーに目がない甘党男子の桂場が愛らしいが、筆者はいまだに優三(仲野太賀)の顔を見ただけで涙腺が緩んでしまう。穂高の言葉に憤りを隠せない寅子。そこに「トラちゃん、落ち着いて。深呼吸」とかつての優三が寅子の気を沈ませ、寅子は新憲法をつぶやくことで、もう一度前を向く。朝ドラでは夫が亡くなった後もヒロインの目の前に現れるという、言わばファンタジー的な演出の作品が稀にあるが、この優三の登場の仕方は寅子の中に優三は生きているということを強く印象付ける。私が私であるために、寅子が道に迷った時、また優三は優しく微笑んでくれるだろう。

 優三が座っていたベンチの逆サイド、そこは花岡(岩田剛典)が腰掛けていた場所だ。東京地裁に戻り、食糧管理法違反の事案を担当する花岡。静まり返る民法調査室で、寅子は小橋(名村辰)から花岡が亡くなったことを聞かされる。次週予告では、花岡が餓死したことが新聞で報じられているワンカットが確認できる。「どうなりたいかは自分が選ぶしかない、本当の自分を忘れないうちに」「なりたい自分に反する」と闇市の食糧に手を出さずに、やつれていた花岡は、“なりたい自分”を守ってまでも死ななければいけなかったのか、そして法とはなにかが問われる展開となりそうだ。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、石田ゆり子、岡部たかし、仲野太賀、森田望智、上川周作、土居志央梨、桜井ユキ、平岩紙、ハ・ヨンス、岩田剛典、戸塚純貴、松山ケンイチ、小林薫
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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