『古畑任三郎』はなぜ今もまったく色褪せないのか リメイク困難な完璧な少数精鋭の会話劇

『古畑任三郎』はなぜ色褪せないのか

 少人数の物語になるほど、出演俳優が画面に映る時間が増えるため、役者の責任が大きくなる。『古畑任三郎』の面白さの屋台骨は田村正和の芝居と三谷の脚本が支えており、そこに犯人役の俳優の芝居が加わることで化学反応が生まれる。毎話の良し悪しは犯人を演じるゲスト俳優にかかっていると言っても過言ではないため、プレッシャーは大きいだろうが、逆に言うとここまでやりがいのある役は他にはないのではないかと思う。

 何より脚本が、犯人を演じる役者の魅力を引き出すことに全力を注いでいる。「倒叙」型ゆえにミステリードラマで定番化している終盤で犯人が犯行理由をベラベラと喋る説明台詞がないのも本作の魅力で、犯行理由の提示は最小限で、殺人を犯して隠蔽しようとする時の鬼気迫る表情に心情は託される。何より、もっとも俳優の魅力が際立つのが罪を認めた後の振る舞いで、犯人と古畑が最後に交わすさりげない会話こそが最大の見せ場ではないかと思う。

 続編があるとすれば二代目古畑は誰が演じるのか? 今だったら誰が犯人役を演じるのか? といったキャスト予想が盛り上がっている『古畑任三郎』だが、それだけ役者冥利に尽きる作品だということの表れだろう。完璧な作品ゆえに第二の『古畑任三郎』を作るのは難しいだろうが、役者の魅力を引き出すことに特化した少人数の俳優による舞台劇のようなドラマには、まだまだ可能性があるのではないかと思う。

■放送情報
『古畑任三郎』シリーズ(再)
フジテレビにて放送中 毎週月曜~金曜放送 ※関東ローカル
第1部:13:50~14:48
第2部:14:48~15:45

出演:田村正和(古畑任三郎)、西村まさ彦(今泉慎太郎)、石井正則(西園寺守)ほか

『警部補・古畑任三郎 第1シリーズ』
脚本:三谷幸喜
企画:石原隆、鈴木専哉(フジテレビ)
プロデュース:関口静夫(共同テレビ)
音楽:本間勇輔
演出:星護、河野圭太、松田秀知(共同テレビ)
制作:フジテレビ/共同テレビ

『古畑任三郎 第2シリーズ』
脚本:三谷幸喜
企画:石原隆、鈴木専哉(フジテレビ)
プロデュース:関口静夫(共同テレビ)
音楽:本間勇輔
演出:河野圭太、松田秀知(共同テレビ)
制作:フジテレビ/共同テレビ

『古畑任三郎 第3シリーズ』
脚本:三谷幸喜
企画:石原隆(フジテレビ)
プロデュース:関口静夫(共同テレビ)
音楽:本間勇輔
演出:河野圭太、鈴木雅之、佐藤祐市(共同テレビ)
制作:フジテレビ/共同テレビ
©フジテレビ/共同テレビ

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