『アンチヒーロー』のタイトル回収も目前? 明墨が追う「糸井一家殺人事件」の真相を考察

『アンチヒーロー』“事件”の真相を考察

 長谷川博己が主演を務めるTBS系日曜劇場『アンチヒーロー』。第7話を終え、長谷川演じる主人公の弁護士・明墨正樹の目的が12年前に起きた「糸井一家殺人事件」の再審をすることで、これまで仕掛けてきたこと全てがここに繋がる展開となっている。果たしてこのまま明墨の思い通りに事が進んでいくのか、終盤に向けての展開を予想してみたい。

 今作は、殺人犯をも無罪にしてしまう“アンチ”な弁護士・明墨正樹の姿を通して、視聴者に「正義の反対は、本当に悪なのだろうか……?」を問いかける逆転パラドックスエンターテインメント。全ては12年前に起きた冤罪事件の「糸井一家殺人事件」の再審に導く為の計画的策略だった。

 これまで明墨は裁判の勝ち負けに関わらず、冤罪が起きていることを次々と証明していき、「糸井一家殺人事件」の冤罪に加担した倉田刑事部長(藤木直人)や瀬古判事(神野三鈴)の裏側を暴き、記者会見で明墨は「過去の事件も追及すべき!」と主張するなど、12年前の事件の裁判が正しく行われなかっことを印象付けていき、再審へ持っていくように外堀を埋めていく作業がこれまでの物語で描かれてきた。残すは事件で指揮を取った伊達原検事正(野村萬斎)の悪事を暴くこと。そして、冤罪で死刑囚となった志水裕策(緒方直人)を救うことだが、志水は再審を望んでいない。この真相が終盤に向けての鍵となっている。

 2012年に千葉県千葉市花見川区の閑静な住宅街で惨殺された糸井一家の3人。金品が盗まれてないことから怨恨の線で捜査され、犯人として逮捕されたのが同僚の志水。志水と糸井は西千葉建設の金を横領した後、その金を巡ってトラブルとなり、志水が糸井を殺害。糸井家の食事に招かれた際に、食事に高濃度の硫酸タリウムを混入させたということになっている。志水は当初は犯行を否認していたが、後に罪を認め、死刑になるも控訴しないという姿勢を続けている。その志水を有罪に追い込んだのが、当時検事であった明墨だ。

 以前、赤峰(北村匠海)が担当した裁判が、富田議員(山崎銀之丞)のもみ消しで敗訴した苦い思いから、富田の息子が関わる事件に対し主観で捜査し大事な可能性を見落としていたことに、明墨は「前の裁判だか何だか知らない富田正一郎という特定の人間に執着しその個人への恨みから、検察が描いたアナザーストーリーを鵜呑みにし客観的事実を見落とし、その人間を有罪に持っていこうとする。君がやっていることは犯罪者と何もかわらないんだよ。いやむしろ下手に法律に詳しい分余計にタチが悪い。強い思い込み、中途半端な正義感が人の判断を狂わせる。免罪を生むのはそういう人間だぞ」と言い放っていた。この言葉は12年前の明墨自身にも向けられている言葉であり、その贖罪として今動いているのだろう。

 志水が控訴をしない理由は娘・牧野紗耶(近藤華)のことを考えて。明墨は、志水が死刑囚のまま死ぬと紗耶は殺人犯の娘として生きて行かなければいけず、「娘を守れるのはあなただけだ」と説得。ただ志水は盛んに「私は罪を犯したんです。大きな罪を」と言っていて、おそらく横領事件に関しては深く関与していた。または、横領に関して会社幹部と反社や政治家とやりとりがあり、それを2人のどちらかが告発しようとしたのを裏切り、何者かに消された。要は、志水のとった行動が裏目に出て糸井一家が殺された。もしくは、横領をネタに脅され、娘を守るために止むを得ず人を殺してしまい、今も娘の命を守るために何も言えないのかもしれない。

 紫ノ宮(堀田真由)が見ていた資料の中に「明墨君へ」と書かれた封筒があった。おそらく事件の真相につながる手がかりが書いてあり、明墨に冤罪追求を託したと思われる。この手紙をきっかけに明墨は再審に向けて動き出すも、無罪に繋がる証拠を倉田刑事に提示しても、聞き入れてもらえなかった。そのことから、検察にいても権力で真実が潰されてしまうので、弁護士となって外から検察と警察の闇を暴こうと決心した……というのが自然だろう。

 この封筒の差出人は、おそらく明墨が「REIKO MOMOSE」と刻まれた墓の前で涙を流していた桃瀬礼子(吹石一恵)。NPO法人保護犬の里「わんはっぴー」の職員(?)と思われ、2018年に死去。その翌年に明墨は法律事務所を立ち上げている。その保護犬施設には、志水の娘の紗耶も働いていて、桃瀬と一緒に写っている写真もある。紗耶は児童養護施設で暮らしているので母親がいない。父親は死刑囚からか苗字を変えているが、桃瀬が後継人の可能性が強い。もしかすると、今のところ登場していない志水の弁護士だったらどうだろう。彼女もいろんな無罪に関する証拠を持っていたが、圧力でもみ消され、命まで落としたのかも知れない。明墨の彼女が同僚かは分からないが最愛な人なのは間違いなく、その意志を引き継いだ明墨がアンチヒーローになったと考える。

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