『あぶない刑事』はなぜ愛され続ける作品となったのか “永遠にカッコいい”タカ&ユージ
新しい刑事ドラマだったが、突然変異で生まれたわけではない
『あぶない刑事』第1話「暴走」や『もっとあぶない刑事』第12話「突破」などでは、タカとユージはゲーム感覚で犯罪を繰り返す若い世代の犯人と対峙している(後者でゲームプログラマーを演じていたのは若かりし頃の遠藤憲一)。舘ひろしと柴田恭兵が70年代から活躍している俳優であることも関係しているだろう。
また、タカ&ユージのような似た者同士で対等な関係のバディは、日本の映画・ドラマでは珍しかった。『傷だらけの天使』の萩原健一と水谷豊、『俺たちの勲章』の松田優作と中村雅俊など、バディものの名作も少なくないが、いずれも上下関係があったり、対照的なキャラクターだったりする。そんな意味でも『あぶない刑事』はエポックメイキングな作品だった。
これは洋画、あるいは海外ドラマの影響がある。脚本家の柏原寛司は、刑事バディもののエリオット・グールド主演の『破壊!』(1974年)や、はみだし刑事コンビが活躍する『フリービーとビーン/大乱戦』(1974年)などの影響を受けたと語っている。
『あぶない刑事』はまったく新しい刑事ドラマだったが、突然変異で生まれたわけではない。先行して日本テレビで放送されていた刑事ドラマ、アクションドラマの系譜の中で生まれた作品である。
『あぶない刑事』は映画として作られたテレビドラマ
柴田恭兵が初めてドラマのレギュラーとして抜擢された『大追跡』(1978年)は、『あぶない刑事』と同じく横浜を舞台にした刑事アクション。コミカルな要素やアドリブの多さなどもよく似ている。やはり柴田が出演し、横浜を舞台にしたアクションドラマが『プロハンター』(1981年)である。こちらは主演の藤竜也と草刈正雄がバディという点も共通していた。
『大追跡』『プロハンター』『あぶない刑事』は、監督の長谷部安春、村川透、脚本の柏原寛司らのスタッフも共通している。監督らは、いずれも映画で活躍していたスタッフであり、これらのドラマはすべて16mmフィルムで撮影されていた。撮影スタッフの一人、柳島克己はその後、北野武監督作品のメインカメラマンとなって「キタノブルー」を生み出した。
なお、『プロハンター』と『あぶない刑事』は、黒澤満プロデューサーが率いるセントラル・アーツによる製作である。舘ひろしと柴田恭兵のコンビを発案したのも黒澤プロデューサーだ。同社は松田優作主演映画『最も危険な遊戯』(1978年)や、仲村トオル主演映画『ビー・バップ・ハイスクール』(1985年)も製作している。
つまり、『あぶない刑事』は映画として作られたテレビドラマだったと言えるだろう。派手なガンアクションやカーアクションはもちろんのこと、画面の奥行き、脚本など、すべて映画を志向して作られていた。だから、劇場映画になってもスクリーンサイズに違和感がない。もともとテレビドラマの枠を超えた作品なのである。
熱いファンに支えられ、『あぶない刑事』は、時を追うごとに進化していった。映画を2作挟んで製作された続編『もっとあぶない刑事』は、メンバーに変更がない分、チームワークが濃密になったキャスト陣がどんどん弾け出していくテレビシリーズだった。
特に顕著なのが、仕事熱心な少年事件担当の女刑事から破天荒なコミックリリーフへと変貌した真山薫(浅野温子)である。ユージとコンビを組むことが増えた「トロい動物」こと町田透(仲村トオル)の活躍も見逃せない。タカ、ユージ、カオル、トオル、そして近藤課長(中条静夫)という5人のコンビネーションがさらに冴え渡っていくのが『もっとあぶない刑事』である。“ナカさん”こと田中刑事(ベンガル)、“パパ”こと吉井刑事(山西道広)ら、港署の面々のパワーアップぶりにも注目したい。
『あぶない刑事』シリーズのスタッフ・キャストが引き継がれて製作されたドラマが『勝手にしやがれ ヘイ!ブラザー』(189年)だ。柴田恭兵がフリージャーナリストの兄、仲村トオルが司法浪人(実態はフリーター)の弟という設定で、さまざまな事件や騒動に遭遇するコメディアクションである。
中条静夫が2人の父親を演じるほか、『あぶない刑事』のセルフパロディも多い。なにより、港署の近藤課長、大下刑事、ナカさん、パパなどの名前も登場するので、今でいうところのシェアードユニバース作品と言えるかもしれない。『あぶない刑事』ファンなら必見の作品だろう。
テレビシリーズの『あぶない刑事』を振り返った後、あらためて『帰ってきた あぶない刑事』の70歳を超えたタカ&ユージをスクリーンでこの目に焼き付けておきたい。2人が最強かつ永遠のバディであることがよくわかるはずだ。
■放送情報
『あぶない刑事』#1~#51
東映チャンネルにて放送
5月24日(金)~6月8日(土)18:00放送
©セントラル・アーツ
『もっとあぶない刑事』#1~25
東映チャンネルにて放送
5月30日(木)~6月3日(月)21:00放送
©セントラル・アーツ
『勝手にしやがれヘイ!ブラザー』#1~6
東映チャンネルにて放送
6月11日(火)より毎週(火)15:00~17:00
※6月2日(日)17:00~18:00 第1話先行無料放送
©セントラル・アーツ
『素浪人無頼旅』
東映チャンネルにて放送
5月25日(土)13:30~16:00
6月8日(土)11:00~13:30
6月12日(水)12:30~15:00
6月21日(金)10:00~12:30
©東映
『素浪人無頼旅II』
東映チャンネルにて放送
5月25日(土)16:00~18:00
6月8日(土)13:30~15:30
6月13日(木)13:00~15:00
6月21日(金)12:30~14:30
©東映
『ドクVSデカ 心療内科医&殺人課刑事の捜査ファイル』
東映チャンネルにて放送
5月26日(日)13:30~15:30
6月7日(金)11:00~13:00
6月20日(木)11:00~13:00
©東映
『ドクVSデカ2 心療内科医&殺人課刑事の捜査ファイル』
東映チャンネルにて放送
5月26日(日)15:30~17:30
6月7日(金)13:00~14:50
6月20日(木)13:00~14:50
東映チャンネル公式サイト:https://www.toeich.jp/