『アンチヒーロー』“明墨”長谷川博己が暴く12年前の真実 権力を求める人間の強欲さ

『アンチヒーロー』明墨が暴く12年前の真実

 完璧に仕立てられた沢原の有罪を覆すには、控訴審で説得力のある新証拠を提示する必要があった。しかし、赤峰(北村匠海)が提出した証拠は、上田の証言でGPS発信機を使って取得したことが暴露される。裁判所の判断が注目されたが、結果は証拠不採用だった。控訴審の裁判長は瀬古(神野三鈴)だった。

 警察のGPS捜査を違法とした最高裁の判決に触れつつ、一般市民がGPSを使って収集した証拠に視聴者の関心を惹きつけるストーリーは、刑事司法を身近に感じさせる秀逸な筋立てだった。瀬古の判断は、人権を尊重する立場から妥当性があるように見える。劇中では公正な判断であるかのように描写されていたが、そこには隠れたつながりがあり、最高裁判事を目指す瀬古から加崎への目配せがあった。証拠は却下されたが、実はそれこそが明墨の意図するところだった

 12年前に志水(緒形直人)に死刑を言い渡した裁判官、捜査の陣頭指揮を執った検事、そして、有罪を求刑した担当検事。バラバラだったパズルのピースがつながって、12年前に起きた一家殺人事件の関係者をつまびらかにする過程は、じわじわと網を狭めながら獲物を追い詰めていくスリルがある。誰もが表と裏の顔を持ち、弁護士や裁判官も例外ではない。一見すると、犯罪者を野に放つヒールのような明墨は、ある目的をもって弁護を引き受けていた。それが最終的に志水の冤罪の立証にとどまるか、それ以上の何があるかは、なお予断を許さない。

■放送情報
日曜劇場『アンチヒーロー』
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:長谷川博己、北村匠海、堀田真由、大島優子、木村佳乃、野村萬斎
プロデューサー:飯田和孝、大形美佑葵
演出:田中健太、宮崎陽平、嶋田広野
脚本:山本奈奈、李正美、宮本勇人、福田哲平
音楽:梶浦由記、寺田志保
主題歌:milet「hanataba」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
法律監修:國松崇
警察監修:大澤良州
©TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/antihero_tbs/
公式X(旧Twitter):@antihero_tbs
公式Instagram:@antihero_tbs
公式TikTok:@antihero_tbs

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる