王道ラブストーリーの『ミス・ターゲット』は挑戦的なドラマだ すみれの空回りが愛おしい

『ミス・ターゲット』は“挑戦的”なドラマだ

 近年、ラブストーリーの存在意義が少しずつ変わってきているような気がする。トレンディドラマ全盛期は、ヒロインがシンデレラストーリーを駆け上がったり、キザな色男の恋愛テクニックに翻弄されたりと、視聴者に“非現実感”を楽しませるための作品が多かった。

 しかし、最近は『silent』(フジテレビ系)など、視聴者にクエスチョンを投げかけるような、いわゆる考えさせられる系のラブストーリーが支持を集めやすい時代になっている。2020年に大ヒットした『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)以降は、ベタなラブストーリーも増えてきてはいるものの、かつてに比べるとやはり少ない。

 そんななか、王道な設定にベタな展開をかき集めた『ミス・ターゲット』(ABCテレビ・テレビ朝日系)は、ある種の挑戦的なドラマだと思う。平成初期のラブストーリーのように、臆することなく“ベタ”を突き詰めまくる。かつて王道と呼ばれていたものが邪道になりつつあるいま、本作のように真正面から純愛を描く作品がGP帯に放送されていることが、ラブストーリーマニアからしたらうれしい。

 5月12日に放送された第4話も、ラブストーリーの王道を踏襲しまくっている回だった。すみれ(松本まりか)は、宗春(上杉柊平)に好意を寄せているけれど、“カセ”が邪魔をして素直になることができない。恋に突き進めない理由が、宗春がお金持ちではないから……というだけなら、ガッツのあるすみれは、彼が営む和菓子屋を有名店にするために奮闘していたと思う。

 しかし、宗春の父親・竜太郎(沢村一樹)が刑事で、詐欺を扱う知能犯係に所属し、ミス・ターゲット(=すみれ)の存在を追っているときた。つまり、宗春とすみれはたとえ愛し合ったとしても未来はない。もし結婚なんてしてしまえば、すみれは生涯怯えながら暮らすことになるのだ。

 宗春のことは忘れてお金持ちの男性を見つけようと思っていたのに、運命のイタズラにより宗春の店でバイトをすることになってしまう……という展開も、また“王道”でいい。その上、和菓子の知識がある元カノ・由衣(田中真琴)が、パリ修行から帰国。すみれの目の前で、宗春に復縁を迫るという波乱の展開に。本当は、彼のことが大好きなのに、「めちゃくちゃお似合いだと思う!」と由衣の恋を後押しし、「一緒にいても未来はない」「お金持ちじゃないし」「理想の男性でもない」と言い聞かせるようにつぶやくすみれが切ない。

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