『光る君へ』玉置玲央が柄本佑と作り上げた道兼の“最期“ 「意味のある幸せな死」

玉置玲央が柄本佑と作り上げた道兼の“最期“

玉置玲央が道兼の最期の笑いに込めたもの

――台本には道兼の最期の場面で、「こんなに笑ったのは、生まれて初めてだ」という台詞があるんですが、実際にはどのような心境で死んでいったと玉置さんは思っていますか?

玉置:人は必ず死ぬのは決まりきっていることで、今まで犯してきた所業や愚かさを亡くなる寸前に振り返った時に、自分に対しての嘲笑ではなく、ある種の虚しさがあったのではないかと。死ぬ直前に道長が一緒にいてくれるんですけど、彼には最期に心を救ってもらえているので、心を開いて寄り添ってもらった結果、彼がそばにいてくれてることに対しての喜び、彼に犯してきた罪に対しての申し訳なさ、いろんなものが入り交じった笑いだったなって、思い返してみると思います。

――道兼の最期のシーンについて、共演された柄本佑さんや演出スタッフとのエピソードを聞かせていただけますか?

玉置:道兼が悲田院に行ったせいで病にかかってしまう。道長が道兼のもとに見舞いに来て、御簾越しに「お前はこれからの人間だから、家を守るために入ってくるな」とつっぱねる、御簾ごしに見合って去っていくシーンだったんです。それがリハーサルで演出の中泉(慧)さんに、「道長は御簾の中に入っていって兄に寄り添う」って提案してくれたんです。中泉さんは「持ち帰って考えてみます」と返したのですが、後日の撮影で佑くんが、「やっぱりどうしても俺は入っていきたいし、道長は兄に寄り添うと思う」って改めて提案してくれたんです。結果、道兼がゴホゴホ咳をしながら倒れ込むところを、道長がたまらず御簾を跳ね除けて入って行って背中をさするシーンになりました。それが道兼としては嬉しいというか、ありがたくて。当初の通りにやった方がいい可能性ももちろんあったんですけど、そこを佑くんが提案してくれて貫き通してくれたこと、道長として道兼に寄り添ってくれたことが、道兼の中に転換機としてあって、道長に救われたという思いは一方的なものではなかったことが分かった瞬間だったんです。道長は自分という存在を貫いてきた人物だと思っていて、そういう人こそがちゃんと生き残っているのが、僕はこの『光る君へ』の好きなところです。佑くんが道長でよかったと思ったし、佑くんと今回共演できてよかった、闘ってくれてありがとうと思いました。いろんな思いが渦巻いたラストシーンで、カメラが止まった後も咳が止まらなくなっちゃったんです。それを佑くんがカメラは止まってるのにずっと背中をさすってくれて、「つらいよね、つらいよね」って言ってくれたのを今でも覚えていて。自分の役割と死というものを全うできるなと思えて幸せでした。佑くんとは以前も共演してるんですけど、その時はライバル関係の役だったので、「あんなに歪みあってたのにな、うちら」って思いながら、今回の撮影では和やかに、朗らかに仲良くやらせてもらったので、「もううちら、こんなにフランクに話せるんじゃん」って思いながら撮影していました。

――第1回のちやはを殺してしまうシーンから、自分の死にざまについてどう想像されてましたか?

玉置:ろくな死に方はしねえなと思ってました。SNSでは「呪い殺される」とかよく書かれてましたけど、そっちの方向の考えは全然なくて。道兼なりの幸せというか、行き着く幸福を見つけて死んでいくんじゃないかという気はしてたんです。彼が第1回から重ねてきた所業はあれど、きちんと納得のいく、意味のある幸せな死を迎えるんじゃないかって、薄ら思ってたのはあります。そういう形になったんじゃないかという気もしますし、もちろん自分だけの力だけではなくて、共演者のみなさんと監督、それこそ佑くんのおかげでそこに至れたのは本当に感謝だなって。本人に伝えたら「感動させてやったぜ」って言ってて、「ちくしょう」って思いましたけど(笑)。

■放送情報
『光る君へ』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送/ 翌週土曜13:05~再放送
NHK BS・BSP4Kにて、毎週日曜18:00~放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15~放送
出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、井浦新、高杉真宙、吉田羊、高畑充希、町田啓太、玉置玲央、板谷由夏、ファーストサマーウイカ、高杉真宙、秋山竜次、三浦翔平、渡辺大知、本郷奏多、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗、段田安則
作:大石静
音楽:冬野ユミ
語り:伊東敏恵アナウンサー
制作統括:内田ゆき、松園武大
プロデューサー:大越大士、高橋優香子
広報プロデューサー:川口俊介
演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろうほか
写真提供=NHK

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