『ドラゴンボール』だけじゃない! 声優・野沢雅子がまぎれもないレジェンドである理由

野沢雅子がまぎれもないレジェンドである理由

 漫画家の鳥山明さんが他界した2024年3月、鳥山原作のアニメ『ドラゴンボール』で孫悟空の声を演じる野沢雅子は第1報時、「強いショックを受けており、コメントが出せない」と所属事務所が発表した(※)。『ドラゴンボール』は1986年の放送開始から、『ドラゴンボールGT』(1996年)まで足かけ10年にわたる長期放送となり、その後もデジタルリマスターと再構成を施した『ドラゴンボール改』(2009年)で復活を果たし、『ドラゴンボール超』(2015年)まで続く歴史で、野沢が一貫して悟空と、その息子たちの声を務めている。原作者である鳥山の死去に大きな衝撃を受けたのも当然の話で、事務所の声明に対してファンからは「野沢さんには長生きしてほしい」との声が多くあがった。

 『ドラゴンボール』シリーズにおける野沢の人気と知名度は、今や日本だけに留まらない。例えば劇場用作品『ドラゴンボールZ 復活の「F」』(2015年)の公開前に、ハリウッドのワールドプレミアで500人を超える現地ファンに囲まれた野沢は、レッドカーペットが敷かれた会場でサイン攻めに遭った。また、『ドラゴンボール超 ブロリー』(2018年)公開前にも、マディソン・スクエア・ガーデンで開催されたイベントでパネルディスカッションに出演するなど、アメリカでもすっかり「悟空の声の人」という認識だ。今や野沢雅子と『ドラゴンボール』のイメージは切り離せなくなっている。だがちょっと待ってほしい。熱心なアニメファンにとっては、野沢は決して“ドラゴンボールの人”だけではないのだ。

 もともと野沢の初めての主演作は、アニメがテレビまんがと呼ばれていた時代のモノクロ版『ゲゲゲの鬼太郎』(1968年)である。それに前後して『魔法使いサリー』(1966年)で、よし子の三つ子の弟(3人とも声は野沢)や、『タイガーマスク』(1969年)の孤児院ちびっこハウスの少年・健太など、それぞれ主人公と関わりを持つ役柄を演じており、視聴者に耳馴染んだ声でもあった。現在の1クールもしくは2クール放送が主流の深夜アニメと違い、番組の視聴率が良ければ1年でも2年でも延長され続けたテレビアニメの黎明期から活動していただけあって、そのキャリアからくる代表作の数も膨大だ。中でも本人が思い入れのあるキャラクターとして悟空と並んで挙げている、『ゲゲゲの鬼太郎』と『銀河鉄道999』にも深い関わりがある。

 『ゲゲゲの鬼太郎』は10年間隔で新シリーズが制作されるたびに、スタッフとキャストが一新され、その時代性に合わせた作風になっている。しかしながら、第1、第2シリーズに出演した野沢は、フジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」で放送された『墓場鬼太郎』(2008年)と、劇場用作品『映画 妖怪ウォッチ シャドウサイド 鬼王の復活』(2017年)でも度々鬼太郎役を演じ、2018年放送のテレビアニメ第6シリーズでは、鬼太郎の父・目玉親父で出演している。第6シリーズのキャストが出演している映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』(2023年)の大ヒットぶりも記憶に新しい。

 テレビアニメ『銀河鉄道999』(1987年)は、テレビシリーズ放送期間中に2本の劇場用作品が公開され、その後もWeb媒体向けのアニメや、OVA『銀河鉄道物語』(2007年)にも一貫して星野鉄郎役で出演。2023年にもアシェットの週刊『アルカディア号 ダイキャストギミックモデルをつくる』の発売に際し、久しぶりに鉄郎の声で商品紹介のナレーションを務めるなど、『999』関連のCMでも絶えず同役を演じているから凄い。声優の引退や他界に伴って、その人の持ち役を別の声優が引き継ぐことはアニメ業界あるある話なのだが、そこへ行くと野沢は自身の持ちキャラを、新作でも再演する機会が多く、この辺もファンには嬉しいポイントだろう。

 『プリキュア』シリーズ20周年記念作の『キボウノチカラ〜オトナプリキュア'23〜』(2023年)には、『ふたりはプリキュア』(2004年)で演じていた雪城さなえ(主人公のひとり・雪城ほのかの祖母)役で出演し、『プリキュア』ファンをも感涙させた。

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