岡部たかし、 『虎に翼』で体現する“人間の複雑さ” 「おもろいと思われたい」が演技の軸に
「滑稽」とは、別の言葉でいえば「ユーモアがある」ということだ。寅子が最初のお見合い間近に家出を試み、「梅丸少女歌劇団に入ろうと思って」と言い訳した時、直言は「寅は歌も踊りも上手だからなー」と便乗して場を和ませようとした。こうして寅子に口では結婚を勧めるものの、母親のはる(石田ゆり子)ほどの真剣さはない直言は、いつも何かと話を反らそうとしてはるから叱られていた。そう、家にいる直言にはいつもユーモアがあった。
でも予審を終えて帰ってきた直言は、はるに対しても多くを語らず、ただ「すまない」と謝るだけだった。予審でどんなことがあったのかは詳しくわからないが、まるで人が変わったようだ。この違いこそ岡部の語る「人間の複雑さ」にあたるところなのだろう。直言は本当に罪を犯してしまったのか。やっていないならなぜ“嘘の自白”をしてしまったのか。そして、その自白をどうやったら覆すことができるのか。ここから先、直言に起こる内面の変化を岡部はどのように表現してくるのだろう。その演技に岡部の本領が発揮されるような気がしてならない。
暗い部屋で丸くなっている直言の指にはきらりと光るものがあった。はるとの結婚指輪である。猪爪家が大ピンチの今こそ、夫婦の絆、そして家族の絆が試される時だ。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、石田ゆり子、岡部たかし、仲野太賀、森田望智、上川周作、土居志央梨、桜井ユキ、平岩紙、ハ・ヨンス、岩田剛典、戸塚純貴、松山ケンイチ、小林薫
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK