『虎に翼』笹山も重要な存在に? 朝ドラ常連の田中要次は真の“名バイプレイヤー”
笹山がこの世界に登場して間もないため、私たちが田中の演技に触れられたのはごくかぎられたものだ。おそらく2、3シーンだけで、セリフも数行しかないはず。しかしこのかぎられた手札の中で笹山がどのような人物なのか示し、先述したような想像をさせるのは、やはり田中の豊富な経験値に裏打ちされた力量があってこそなせる業なのだろう。こういった俳優のパフォーマンスの積み重ねにより、映画やドラマというものは成立しているのだ。
田中といえばこれまで、『すずらん』(1999年度前期)や『ゲゲゲの女房』(2010年度前期)、『梅ちゃん先生』(2012年度前期)に『純と愛』(2012年度後期)、『あまちゃん』(2013年度前期)、『べっぴんさん』(2016年度後期)といった朝ドラに出演してきた。さらには『ちむどんどん』のスピンオフ作品である「賢秀望郷編」(2022年)にも。むろん、演じる役どころはバラバラだ。この朝ドラへの出演歴からだけでも分かるように、田中が現在のエンターテインメント界における名バイプレイヤーのひとりであることに異を唱える視聴者はいないだろう。
特別な名前を持たないキャラクターとして各作品の世界観に溶け込むこともあれば、『アバランチ』(2021年/カンテレ・フジテレビ系)で演じた“ウチさん”こと打本鉄治のように、作品の世界観を決定づける役どころを担うこともある。田中要次こそ真の名バイプレイヤーだといえるのかもしれない。俳優は自分が演じるキャラクターを主張させるばかりではなく、ときにはただ存在させるだけにとどめなければならぬこともあるのだから。『虎に翼』ではどちらなのだろうか。できれば私の想像と田中の妄想が、どちらも実現してほしいものである。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、石田ゆり子、岡部たかし、仲野太賀、森田望智、上川周作、土居志央梨、桜井ユキ、平岩紙、ハ・ヨンス、岩田剛典、戸塚純貴、松山ケンイチ、小林薫
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK