『ブギウギ』スズ子を突き動かす“好奇心” 1人の人間が臆病さを乗り越える瞬間を描く
王道の人間ドラマが美談で終わらないのも『ブギウギ』の良いところだ。愛子(このか)は学校を休むと言い出す。理由はかけっこでライバルの転校生に負けたくないから。一番だった自分が負けるのは嫌だと言うのだ。スズ子は「休んでもええで。ただなあ、逃げたらそのことは一生忘れられへんで」と言う。
これだけだと、よくある親から子へのしつけだが、「マミーもな、人に負けるのは好かん」と理解を示し、さらに「負けるんが嫌で逃げるんやったら、たぶん負けたほうがええねん。負けて悔しい思いしたほうがたぶんええねん」と持論を述べた。
スズ子自身、逃げ出したいくらいの心境である。けれども、一歩を踏み出したその先に新しい景色があること、ズキズキの向こうにワクワクがあることをスズ子は知っていて、その経験を愛子に伝えようとする。その反面、どうしても嫌なら逃げていいと本人の意思を尊重しており、無理強いしても意味がないことも理解している。
結果的にかけっこに負けた愛子ではあったが、表情は晴ればれとしていた。一(井上一輝)の「お前が思うほど誰も注目してなかったぜ」もまた真実で、それも人生と思いつつ、ズキズキワクワクの精神はちゃんと娘に伝わっているようだった。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供=NHK