『ブギウギ』大和礼子の娘・水城アユミの“正体” スズ子の元に巡り巡ってきた問い

『ブギウギ』水城アユミの“正体”

 『ブギウギ』(NHK総合)の放送も残すところわずか。そんなタイミングで視聴者の関心を一気に引いた新たな登場キャラクターがいる。水城アユミ(吉柳咲良)だ。世間を騒がせる新進気鋭の歌手であり、スズ子(趣里)との初共演が年末の歌番組となる。打ち合わせで彼女と鉢合わせたスズ子は、初めてアユミが大和礼子(蒼井優)の娘であることを知った。

 大和礼子といえば、スズ子がかつて梅丸少女歌劇団に入団した頃から憧れていた先輩だ。梅丸少女歌劇団の花形でありながらも、毎日のように残って自主練をしていた姿が印象的だった。才能があっても努力することを諦めない。その自己に対する厳しさと、自分を目当てに人々がステージを観にきているという自覚、それに対するプライド。彼女を縁取るあらゆる要素が、最初の頃の彼女の固い表情に現れていたように思う。その面影が、アユミにも感じられるのだ。

 スズ子にとって大和との出会いがその後の彼女の人生の転換期になったように、スズ子も大和に影響を与えた。スズ子との交流を通して大和の表情も温和になり、後輩に対する接し方も親しみやすいものになった。梅丸とはストライキの件で揉めたが、劇団を去った後に伴奏を担当していた股野(森永悠希)の泣き落としのようなプロポーズによって2人は結婚し、大和は妊娠した。しかし、同時に病気にもなってしまい、出産で病状は悪化し亡くなった。当時、まさかの“ナレ死”に驚かされたものだが、お別れ会に来た橘(翼和希)が股野の抱く赤ん坊に「きっと歌と踊りの天才になる」と言っていたのが伏線となるとは。

 アユミは興味深い存在だ。これまで比較的史実に基づいたストーリーが印象的だった『ブギウギ』だが、スズ子が渡米する前頃から登場してもよかったはずの、美空ひばりなどの次世代的な存在がいなかった。そして彼女の物語のクライマックスとなるこの2週で突然オリジナルストーリーに切り替わったのも興味深い。第118話でアユミと彼女の父でありマネージャーである股野は「ラッパと娘」を歌番組で歌う許可をスズ子に得ようとする。

 実際、スズ子のモデルとなった笠置シヅ子も、かつて彼女の歌を歌わせてほしいと美空ひばりにお願いされ一悶着あったことで知られている。一方で、美空はこの歌番組の元ネタと考えられる『第7回NHK紅白歌合戦』に出場しておらず、同年に出演した江利チエミにも思える。水城アユミという名前の類似性然り、父親が音楽家だったことなど江利に出自が似ているのだ。しかし、結局のところアユミのモデルが誰なのかを追求することが問題なのではない。それより重要なのは、彼女が象徴するものである。

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