『マルス』最終話の激突は“傍観者”へのアンチテーゼに 道枝駿佑による新たな主人公像

『マルス』最終話の激突が描いた痛烈な批判

  “アイコン”こと逢沢渾一(板垣李光人)が校内放送を通して訴えた「相手の痛みを知って人は初めて優しくなれる」というメッセージは、ネットだけで世界を、人間を知った気になって、流れてくる断片的な情報だけで人を断罪するような者への痛烈な批判を感じさせる。ネットの画面越しに自身は安全な場所からジャッジするばかりで、自分自身がバッターボックスに立つことは決してない。本作は、失敗した人や間違えた人の揚げ足をとって楽しむ悪趣味な匿名の傍観者へのアンチテーゼにもなっていた。

 それを象徴するかのように、ゼロと國見は現実社会ではなかなかないほど生身の人間同士、これでもかとぶつかり合う。ネット上だけでやり合う空中戦ではなく、高校生と今をときめく一大企業の社長が直に対峙するぶつかり稽古のような姿が新鮮に映った。

 白い狼の着ぐるみの下に繊細さを併せ持ちながらも自身を奮い立たせ、仲間のことを牽引するゼロは、改めて道枝にしか務まらなかったことを思わせる。センターにいながらも、その正体や本心までは掴み切れないミステリアスさを秘めた“神出鬼没なヒーロー”という新たな主人公像を作り上げた。クールでいながら、彼には関わる人の心に“小さな革命”の灯火を着火させるような不思議な魅力と引力がある。

 彼らの革命を目の当たりにしてアイコンが声を振り絞って紡いだ言葉が現実になることを、切に願う。

「隣にいる君に手を差し伸べたい、そばにいるあなたの力になりたい、そうやって誰かを思いやれる力があればこの世界はきっと変われるはず」
「誰もがもっと他人を労われる優しい世の中でありますように」

■配信情報
『マルス-ゼロの革命-』
TVer、TELASAにて配信中
出演:道枝駿佑(なにわ男子)、板垣李光人、吉川愛、井上祐貴、横田真悠、山時聡真、泉澤祐希、戸塚純貴、山口紗弥加、岩松了、野間口徹、菜葉菜、徳井健太(平成ノブシコブシ)
脚本:武藤将吾
音楽:未知瑠
ゼネラルプロデューサー:中川慎子(テレビ朝日)
プロデューサー:田中真由子(テレビ朝日)、中沢晋(オフィスクレッシェンド)
監督:平川雄一朗、片山修
制作協力:オフィスクレッシェンド
制作著作:テレビ朝日
©︎テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/mars/
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/mars_tvasahi
公式Instagram:https://www.instagram.com/mars_tvasahi/

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