『春になったら』ウエディングプランナー黒沢の安心感 西垣匠がもたらす束の間の“笑い”

西垣匠が『春になったら』にもたらす“笑い”

 3月に入り、暖かい日が増えてきた今日この頃。「もうすぐ春がやってくるね」なんて声を聞くたびに、『春になったら』(カンテレ・フジテレビ系)の雅彦(木梨憲武)の姿が思い浮かぶ。膵臓がんを患い、余命3カ月を宣告されている雅彦は、春になったらこの世界からいなくなってしまう。

 物語も第7話に突入したあたりから、“終わり”を意識するシーンが増えてきた。食べる量が少なくなっていくのと反比例するように、増えていく薬の量。いまの雅彦にとっては、歯磨き粉のチューブを絞るのだって一苦労だ。その上、「死にたくないなぁ」とつぶやく姿を見てしまったものだから、瞳(奈緒)だけでなく、わたしたち視聴者もやるせない気持ちになってきた。

 しかし、そんな本作に束の間の“笑い”をもたらしてくれているのが、瞳と一馬(濱田岳)が結婚式を挙げる「Lily bridal」で働くウエディングプランナーたち。とくに、西垣匠が演じる黒沢には何度も笑わせてもらった。

春になったら

 黒沢は、椎名家が抱える問題の蚊帳の外にいる人物だ。瞳が働く「杉村助産院」の助産師たちや、親友の岸(深澤辰哉)と美奈子(見上愛)は、内側に入って雅彦の闘病を支えようとしているが、深いところまで聞かされていない黒沢は、コロコロと意見を変える瞳に対してやり切れない思いを抱えている。しかも、黒沢にとっては、瞳と一馬の結婚式が初めてひとりで担当するカップル。運が悪いというかなんというか……。

 全貌を知っているわたしたちは、「雅彦が大変なときだから仕方ないよね……」と理解してあげることができるが、黒沢にとっては「なんだこの問題ばかりの新郎新婦は!」という感じ。チャペルの祭壇に座り込み、「振り回されるこっちの身にもなってくれよ! もうやってられないって! やってられません!」と足を投げ出すシーンなんかは、あまりにもキュートで頬が緩んでしまった。「新郎新婦がどんだけワガママ言おうが、ウエディングプランナーはいつも笑顔? 無理! 無理です!」と言う姿を見ていると、「うんうん、分かった、分かったよ」と声をかけたくなる。

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