伊藤淳史の心情ともリンク? 『離婚しない男』を主題歌「Frozen Butterfly」から読み解く

『離婚しない男』を主題歌から読み解く

 『離婚しない男―サレ夫と悪嫁の騙し愛―』(テレビ朝日系)で妻・綾香(篠田麻里子)との離婚を目指している渉(伊藤淳史)。だが、親権を得るために1年という期間が必要なことやマサト(小池徹平)の策略もあり、なかなか前に進まない。そんなもどかしさを渉を演じる伊藤淳史の演技とともに表現しているのが本作の主題歌である主題歌「Frozen Butterfly」である。

 離婚は、パートナーと別れることで自分の幸せを掴み取る行動だと思うのだが、渉は素直でまっすぐな性格でいつも自分より他人を優先するので、とにかく心配になる。そう思っていたら、案の定、渉は第6話で、マサトが送り込んできた刺客・ナオミ(藤原紀香)の魅力と積極的さに流され、キス寸前までいってしまう。

 それでも、すんでのところで渉が大切な一線を超えず、浮気をしないのも素直すぎるがゆえ、ちょっとズレているからだ。ナオミは、浮気をして愛人がいる上に、暴力を振るってくる夫から一方的に離婚届を送り付けられて嘆き悲しんでいた。これらは全てウソの可能性もあるが、わざわざ渉にこう言うということは、「私は浮気してもいい」という意思表示だ。しかし、お人よしすぎる渉はナオミを心配し、「いい弁護士を紹介するから、一緒に頑張って離婚を勝ち取ろう」と励ました。決して、「綾華もやってるし、自分も……」とはならない。ズルさとは無縁だ。マサトと違って、渉が策略を練ることなどには向いてないのが、この場面からも伝わってくる。

 渉は、現在進行形で自分を裏切っている綾華のことは許せないのだが、愛情が薄らいだわけではない。離婚したいのはあくまで、愛する娘・心寧(磯村アメリ)のため。だから綾華の浮気の証拠を集めようとする渉は心が張り裂けそうな表情をするし、ナオミに「妻と離婚したいと思っている」と言った時でさえ、どこか切なそうだった。

 物語が進んでいくにつれ、いつも終盤で流れてくる主題歌の「Frozen Butterfly」と渉の複雑な心のうちがリンクしているように聞こえてきた。

 <傷付くたびに ハート凍らせたのさ いっそ何も感じないように>というのは明らかに自分を拒否し、料理に手をつけずに捨てるなど嫌がらせのようなことまでするようになった綾華の行動をひたすら我慢している渉の姿に重なる。部屋には渉と綾華が笑顔でおさまっている結婚写真が飾ってあるのが<笑顔だらけのタイムライン(Lies) フィルターオーバードーズな僕たち>というように、渉にはもうその時の笑顔さえ、たくさんのフィルターをかけて加工した“ニセモノ”であるかのように見え、不安なのではないだろうか。

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