藤本タツキ『ルックバック』アニメ化のポイントは? 絶対に外せない“静かな情熱”の表現

 2021年7月に『少年ジャンプ+』で公開され、“傑作”として話題を呼んだ読み切り『ルックバック』が、劇場アニメ化されることが明らかとなった。同作がいかなる要素によって読者たちの心を震わせた作品だったのか振り返りつつ、それをアニメによって再現することの難しさについて考えてみよう。

劇場アニメ「ルックバック」特報

 『チェンソーマン』や『ファイアパンチ』で知られる漫画家・藤本タツキが「創作すること」について真正面から向き合った作品。一言で言うと、それが『ルックバック』だと言えるだろう。学生新聞で4コマを連載していた小学4年生の藤野と、引きこもりの同級生・京本がマンガの才能を通じて出会い、壮絶な運命に巻き込まれていくというストーリーで、クリエイターの“業”が大きなテーマとなっている。

 すぐれた創作は人の心を打つ一方で、よくもわるくも他人の一生をガラリと変えてしまうことがある。そんな表現者ならではの視点で描かれた“漫画家による漫画家についての物語”は、数多くのクリエイターたちに刺さったようで、当時大きな反響を呼んだ。

 たとえば『ろくでなしBLUES』や『ROOKIES』で知られる森田まさのりは、自身のX(旧Twitter)にて「『チェンソーマン』は読んだ事ないけど、きっと天才的に面白いんだろうなぁと、容易に想像できるくらい、この読み切りは凄かった!絵も話もコマの使い方さえも素晴らしすぎる!あぁ、少年ジャンプは大丈夫だ」と、同作を激賞。ほかにも『おやすみプンプン』の浅野いにおや『ちはやふる』の末次由紀、『ブルーピリオド』の山口つばさなど、さまざまな漫画家たちが同作についての感想を呟いていた。

 他方で『ルックバック』といえば、2019年に起きた京都アニメーションをめぐる悲痛な事件を彷彿とさせる側面があり、激しい議論を招いたことも記憶に新しい。当然その扱いは決して中途半端なものではなく、創作に携わる者にとっては避けては通れないこの事件に、どこまでも誠実に向き合おうとするものだった。

 そもそも作者の藤本は『涼宮ハルヒの憂鬱』を筆頭として、京都アニメーションの作品に大きな影響を受けたことを公言しているため、なおさら例の事件には大きなショックを受けていたはずだ。実際に藤本は『ルックバック』のアニメ化にあたり、「自分の中にある消化できなかったものを、無理やり消化する為にできた作品です」というコメントを発表しており、作品のなかに込められた想いの一端に触れることができる。※

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 『ルックバック』は藤本自身が絶望のなかで辿り着いた1つの心の落としどころであり、それがゆえに多くのクリエイターや、「創作」を愛する人々の琴線に触れる物語になったのではないだろうか。

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