『ブギウギ』で“パンパンガール”を描く意味とは? 当時の日本を象徴するスズ子とおミネ

『ブギウギ』でパンパンガールを描く意味

 こうなってしまったのは、スズ子の周りに記者・鮫島(みのすけ)のような悪意を持った人たちも増えたことが関係している。それだけスズ子が国民的なスターとなったということなのだが、それは同時にスズ子の人となりが誤解されやすくなってしまったということも意味している。すでに大人気のスズ子は「穿った見方をしたい人はすればいい」と自分を批判する人を突っぱねても困らなかったはずだ。しかしそうはせず、今の状況を打開しようとおミネの元に押しかけるように訪れて、自分の身の上をきちんと話し、誤解を解こうとするスズ子。その姿に「自分の歌でより多くの人に笑顔になってもらいたい。そのために歌っているのだから」という強い信念を感じた。

 スズ子はスターである前に、夜泣きで寝不足になりながら娘の愛子を育てるシングルマザーであり、歌を歌うことで生計を立てている女であるという「生活者」としての視点をずっと失わないできたように思う。だからこそ、パンパンガールたちのように影で生活する者に気が付き、その苦労を理解し、寄り添おうとすることができるのだ。

左から、福来スズ子(趣里)、達彦(蒼昴)

 壊れた建物が立派になるだけが復興ではないように、一部の人に疎まれてしまう曲は“復興ソング”とは言えない。きっと私たちは今、全ての人の心に「東京ブギウギ」が染み渡るまでの様子を、ひいてはこの曲が真の復興ソングとなるところを観ているのではないだろうか。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、生瀬勝久、小雪、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
語り:高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー) 
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
音楽:服部隆之
主題歌:中納良恵 さかいゆう 趣里 「ハッピー☆ブギ」
写真提供=NHK
公式サイト:https://nhk.jp/boogie

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