『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』を待っていてよかった! 刻まれた作り手たちの情熱

『SEED FREEDOM』作り手の情熱

 『SEED DESTINY』放送終了から約20年、映画化の第一報から時間をかけて熟成させただけはあるキャラクター描写の数々は、本当に「待っていてよかった」と思えるものだった。テレビシリーズでは敵味方に分かれていたキャラクターたちが、強敵を倒すために団結している姿が頼もしく、また燃えるのだ。注視したいのは、サンライズ制作の別作品『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』(2014年)からのフィードバックが感じられる点だ。

『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』

 『クロスアンジュ』は『ガンダムSEED』シリーズの監督・福田己津央が、作品の内容に深く関与するクリエイティブプロデューサーという肩書で参加していた。人間社会の根底にある差別問題に、ガラの悪い先輩がお嬢様育ちの新入りを陰湿にイビる女囚ものの要素を加え、美少女ロボットアニメの枠組みに落とし込んだテレビアニメである。

『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』

 『SEED FREEDOM』終盤の戦闘シーンに差し込まれる笑いを誘う要素や、キラに支援ユニットを届けるラクスのパイロットスーツ及びお尻を突き出す前屈姿勢のライディングポーズが、『クロスアンジュ』の可変メカ、パラメイルの操縦席を想起させるものであったり、『SEED FREEDOM』に『クロスアンジュ』のスタッフ、キャストが加わっている辺りは、福田己津央関連作品を観続けていたファンなら「おっ」となるポイントと思われる。その意味では、映画の制作が休止している期間に福田監督が他の作品で培ったものが本作に逆輸入されたとも言え、お披露目までに時間を要した意義があった映画ではないかと思う。

『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』

 福田監督は1月26日に行われたスタッフトークショーの壇上で「さらに『SEED』を観たいという声が上がることが何よりもうれしいことです」と話しており、まだアイデアの引き出しはあるように見受けられるので、これからの新展開も期待したい。

■公開情報
『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』
全国公開中
声の出演:保志総一朗(キラ・ヤマト)、田中理恵(ラクス・クライン)、石田 彰(アスラン・ザラ)、森なな子(カガリ・ユラ・アスハ)、鈴村健一(シン・アスカ)、坂本真綾(ルナマリア・ホーク)、折笠富美子(メイリン・ホーク)、三石琴乃(マリュー・ラミアス)、子安武人(ムウ・ラ・フラガ)、関 智一(イザーク・ジュール)、笹沼 晃(ディアッカ・エルスマン)、桑島法子(アグネス・ギーベンラート)、佐倉綾音(トーヤ・マシマ)、大塚芳忠(アレクセイ・コノエ)、福山 潤(アルバート・ハインライン)、根谷美智子(ヒルダ・ハーケン)、楠 大典(ヘルベルト・フォン・ラインハルト)、諏訪部順一(マーズ・シメオン)
監督:福田己津央
企画・制作:サンライズ
原作:矢立肇、富野由悠季
脚本:両澤千晶、後藤リウ、福田己津央
キャラクターデザイン:平井久司
メカニカルデザイン:大河原邦男、山根公利、宮武一貴、阿久津潤一、新谷学、禅芝、射尾卓弥、大河広行
メカニカルアニメーションディレクター:重田智
色彩設計:長尾朱美
美術監督:池田繁美、丸山由紀子
CGディレクター:佐藤光裕、櫛田健介、藤江智洋
モニターワークス:田村あず紗、影山慈郎
撮影監督:葛山剛士、豊岡茂紀
編集:野尻由紀子
音響監督:藤野貞義
音楽:佐橋俊彦
製作:バンダイナムコフィルムワークス
配給:バンダイナムコフィルムワークス、松竹
©創通・サンライズ

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