『ブギウギ』水上恒司×足立紳の“一本筋”で成立 村山愛助は想像を超えたキャラクターに

『ブギウギ』“一本筋”で成立した村山愛助

 演じている水上恒司が凛々しいイメージの強い俳優だから、よけいに愛助の強さが際立ったのではないだろうか。亡くなる場面も、最期まで力を振り絞って、スズ子に手紙を書くその姿は、朝ドラ『ゲゲゲの女房』で茂(向井理)が不自由な片腕一本で必死に漫画を描いている表情にも似て、胸を打った。死よりも生きようとする力が際立つ場面になったのは、水上の力であろう。

 年下でも、病弱でも、強い精神を持ち、愛した人と共に生きていくという考え方をもった人物。これは水上が注目された『中学聖日記』(TBS系)の役柄にも共通している(当時・岡田健史)。中学生が教師と恋愛関係になり、年齢的にありえないと世間から冷たい目で見られ、仲を引き裂かれるが、ふたりの愛はホンモノだった。長い時間をかけて、愛情の真剣度の高さを示した物語であり、『ブギウギ』も愛助の病が悪化さえしなければ、きっとトミを説得することができただろう。

 『ブギウギ』では、病弱だった愛助が、スズ子のエネルギッシュな歌に救われて、生きる希望を見出し、だからこそ、スズ子には歌をやめないでほしいと願った。その願いによって、スズ子は生涯、愛した人物はただひとり、愛助だけとなり、ただただ、歌い続けることになるのは皮肉めいてはいる。だが、愛助によって福来スズ子は、たくさんの悲しい気持ちを抱えた人たちの心にあかりを灯すという選ばれた人物になるのである。

 ヒロインに甘える年下の恋人で終わらず、病気で死んでいく悲劇の相手役だけでも終わらず、村山愛助の生き方をきちんと物語に刻みつけたのは、足立紳と水上恒司の両者に、一本筋が通っているからだろう。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、生瀬勝久、小雪、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
語り:高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー) 
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
音楽:服部隆之
主題歌:中納良恵 さかいゆう 趣里 「ハッピー☆ブギ」
写真提供=NHK
公式サイト:https://nhk.jp/boogie

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