玉木宏の鶴見が最高の当たり役に 不可能に近かった『ゴールデンカムイ』実写化は大成功!
やったぜ! 玉木宏! 『ウォーターボーイズ』(2001年)でアフロを燃やしながら走っていた姿に爆笑し、中途半端な青春を送る燻った姿に繊細さを感じた。そして子ども心に「このお兄さんは異様にカッコいいだけでも、面白いだけでもない! きっと狂気めいた悪役なんかも絶対に似合う!」と確信してから20数年……。遂に最高の当たり役をゲットした。彼の演じる鶴見だけでも、この映画は勝ったと言えるだろう。何の話かと言うと、『ゴールデンカムイ』(2024年)の話である。
『ゴールデンカムイ』は、明治時代の北海道を舞台に、アイヌの隠した金塊を巡り、一癖も二癖もある者たちが苛烈な争奪戦を繰り広げるさまを描く物語だ。さっきまで敵だった者が味方に加わり、味方だったものが裏切る。そんなドライな人間模様がある一方で、丹念な取材によって描かれるアイヌの文化、そしてどれもこれも美味そうなサバイバルご飯の数々……。怪人・変態の奇行に笑いながら、それぞれの熱い生きざま・死にざまに涙する。金塊争奪戦という本筋がありつつ、サブの要素も非常に楽しい。いわば、ごった煮エンターテインメントである。
そんな『ゴールデンカムイ』の実写化だが、これは不可能に近いと思われた。何せスケールがデカい。「北海道はでっかい道」とはよく言ったものである。それに、同じ『週刊ヤングジャンプ』連載作品を実写化した『キングダム』シリーズ(2019年~)で大規模なアクションは実現可能だと証明されているが、『ゴールデンカムイ』はそれだけではないのだ。本編にはおかしな残虐描写が大量にあり、変態や猟奇殺人鬼もたくさん出てくる。マンガならではのギャグも多い。いろいろあってロシア人と殴り合うことになったとき、急に格闘技の煽りVTR的なインタビューが始まるなど、マンガ・アニメ以外だとなかなか難しいものがあるだろう。球速165キロの魔球といった原作を、どう実写化するのか? 見逃し三振かバットが折れるかのどちらかだろうと心配したが……前置きが長くなって申し訳ないが、今回の実写版は大成功である。きちんと打ち返し、打者を進めた。
本作は確かに『ゴールデンカムイ』だった。冒頭の二〇三高地の激戦から、山﨑賢人の身体能力をフルに活かしたド迫力のアクションが炸裂。『キングダム』シリーズで数々の合戦シーンを手掛けた下村勇二アクション監督と、『HiGH&LOW』シリーズ(2015年~)でヤンキー1000人が殴り合う規格外の死闘を演出した久保茂昭監督の手腕が存分に発揮されている。ここで既に作品が持つ大作感、ひいては“北海道はでっかい道感”はしっかり表現されていた(二〇三高地だけど)。
そして舞台が北海道に移ってからは、熊との死闘に、雪原の死闘など、原作の象徴的なアクションをしっかり見せつつ、極めて再現度の高い原作キャラが続々と出てくる。さらに、これは嬉しい誤算と言っていいかもしれないが、久保茂昭監督の暴力人(ばいおれんちゅ)としての発想が爆発しており、原作の容赦なき残虐描写もしっかり形にしてくれているのだ。熊が人間を蹂躙するシーンなど、このスケールの邦画では珍しいほど、ちゃんと人体損壊を描いている(顔面が剥がれているのに頑張る人が最高!)。