支持されない作品がなぜ大ヒット? 『Lift/リフト』から考える配信作品のあり方

支持されない『Lift/リフト』なぜヒット

 コメディアンで俳優のケヴィン・ハートは、近年、配信業界で最も精力的に仕事をしているスターの一人だ。Netflixで配信が開始された、彼の主演作『Lift/リフト』は、映画業界の異変を示す出来事が起こったことで、話題となっている。

 近年、批評サイトでは、映画作品の評価のスコアが、批評家と一般の観客の間でギャップが生じる場合があり、それについて議論が交わされることが増えてきた。しかし、本作『Lift/リフト』は、そうではない。批評家と一般の観客のスコアが、どちらも著しく低いのだ。そして興味深いのは、そのような評価にもかかわらず、Netflixのグローバルランキングで初週1位を獲得し、すでに累計視聴タイム5850万時間を達成しているのである。(※)

 多くの視聴者が否定的な感想を持った作品が、なぜ大きな注目を集め、多くの観客に観られることとなったのか。ここでは、本作『Lift/リフト』の内容を振り返りながら、この珍事といえるケースが示すものを考えていきたい。

Lift/リフト

 本作で活躍するのは、ケヴィン・ハートが演じる主人公サイラスが率いる、国際的な美術専門の窃盗チーム。彼らは国際刑事警察機構(インターポール)に依頼され、テロ攻撃を防ぐために、飛行中の飛行機から金塊を強奪するミッションを開始する。

 ケヴィン・ハートの演じる役柄といえば、言うまでもなく、楽しく笑えるようなキャラクターが期待されている。しかし本作では、美術品専門のオシャレな犯罪集団のまとめ役として、世界を股にかける二枚目役を演じている。コミカルな要素があるとはいえ、ハートの持ち味を活かしているかと言われれば、疑問をおぼえるところだ。

 一方、Prime Videoで配信されているハートの主演作『ダイ・ハート』は対照的に、彼の魅力を引き出す内容だった。ケヴィン・ハートがケヴィン・ハート本人の役を演じ、アクションスターへの転身を目指すためにトレーニングをおこなっていくというドタバタコメディである。アクションスターのイメージとは程遠い彼が、ジョン・トラヴォルタ演じる怪しい指導者に厳しく管理されながら、ひどい目に遭っていくところが見どころである。

Lift/リフト

 本作『Lift/リフト』は、もともとハートのために書かれた脚本というわけではないため、とくにそのような趣向はなく、彼がそのままアクションスターのような役柄に挑戦することとなる。ヴィンセント・ドノフリオやジャン・レノ、サム・ワーシントンなど豪華な俳優陣も脇を固めているものの、とくにキャスティングにおいて興味深い“化学変化”は起きていないようにも見える。

 とはいえ、近年盛り上がった「NFTアート」や、バンクシーを思わせる謎のアーティストの登場という、娯楽大作として他との差別化がはかられているといえる要素があったり、クライマックスまでの飛行機内でのめまぐるしい攻防戦など、さまざまな見どころや、しっかりと予算がかかったシーンが用意されているのは確かだ。決して、クオリティが低い作品ではない。

Lift/リフト

 だが、そこに作り手たちの熱意が、それほど感じられないのも、正直なところだ。アクション映画に新風を巻き起こそうという気概があるかどうか、または、娯楽であることを超えて、この題材を描く強い理由があるかどうかといえば、疑問をもってしまう。

 同じNetflix配信作品でいえば、これも大きなヒットを達成し、現在累計1位の座を維持している『レッド・ノーティス』(2021年)が、本作のテイストに近いと思われる。それでは『レッド・ノーティス』が、本作よりも、はるかに良い内容なのかといえば、そうとも言えないところがある。むしろ、ありふれた娯楽大作の枠を出ないという意味で、ほとんど同じような作品だと言っていいのではないだろうか。

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