『ブギウギ』が現代に甦らせる芸能史 笠置シヅ子の転機となった『舞台は廻る』とは?
第16週「ワテはワテだす」の第72話を観るかぎり、タナケンはスズ子にとってかなりの強敵になりそうだが、厳格な雰囲気とのギャップによって生まれる「笑い」もあるはず。それに、コメディ作品だからといって、舞台裏まで「笑い」に満ちているわけではない。本番で金銭と引き換えに客に「笑い」を提供するため、俳優たちは稽古を重ね、個々の技と作品そのものをブラッシュアップしていく。そんなプロフェッショナルな現場の裏側を観ることができるのも『ブギウギ』の面白さだ。
さて、本作はブギの女王・笠置シヅ子の人生をモデルにしたものとあって、昭和の芸能史に名を刻んだ人々をモデルとしたキャラクターがほかに何人も登場している。『舞台よ!踊れ!』への出演にスズ子を推薦した羽鳥善一(草彅剛)は、実際に笠置と数々の名曲を世に送り出した服部良一。タナケンは実在した喜劇王・エノケンこと榎本健一をモデルにしている。いまさら述べることではないかもしれないが、情報を整理するため、念のため記しておく。
『ブギウギ』笠置シヅ子に影響を与えた“エノケン”こと榎本健一とは? 史実から紐解く
放送中の朝ドラ『ブギウギ』(NHK総合)は、気がつけば早くも折り返し。昭和の大スターである笠置シヅ子をモデルとした主人公・スズ子…
昭和の芸能史をさかのぼってみると、1946年に笠置とエノケンは初めて舞台で共演している。タイトルは『舞台は廻る』で、作家は菊田一夫。終戦後に初めて服部と笠置がタッグを組んだのはこの作品でのことで、服部は同作のために「コペカチータ」という楽曲を書き下ろした事実がある。ということは、同作が『舞台よ!踊れ!』のモデルとなった舞台だとみて間違いないだろう。しかし、正式なあらすじまでは手に入れることが困難なため、果たしてオマージュを捧げているのかなどまでは不明だ。
ちなみに1948年には笠置が主演した映画『舞台は廻る』が公開されている。けれどもこちらは作家・久生十蘭によるもので、服部は音楽家として参加しているが、エノケンは出演していない。ふたつの『舞台は廻る』をリアルタイムで観ている人は、いまどれくらいいるのだろうか。そしてその人々は『舞台よ!踊れ!』を、どのように観るのだろうか。聞いてみたいものである。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、生瀬勝久、小雪、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
語り:高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
音楽:服部隆之
主題歌:中納良恵 さかいゆう 趣里 「ハッピー☆ブギ」
写真提供=NHK
公式サイト:https://nhk.jp/boogie