『光る君へ』紫式部は「罪な女」 吉高由里子、大河ドラマ主演としての覚悟を語る

『光る君へ』吉高由里子インタビュー

柄本佑との“戦友”感

――大石静さんの脚本を読んで、どのように感じられましたか?

吉高:大石さんの本はパワフルで、1行1行のインパクトが強いなと思いました。会話劇でも次の1行を読んだら前の1行と全く逆の気持ちを言っていたり、感情の起伏が情熱的に描かれているなと感じましたし、まひろという役も大人のようで子供の部分や甘えたいのに甘えられない葛藤があったりして、自分を抑え込みながら生きているような女性です。道長と恋に落ちながら、受け入れられない現実との葛藤を今は撮影していて、旦那さんとなる藤原宣孝(佐々木蔵之介)とのやり取りがもう少しで始まりそうな、20代のまひろはまだこれからというところです。まひろと道長が会う時の気持ちとして、「万感の思い」という言葉がよく使われるんですよ。現代っぽい言葉のラリーなのでリアルに感じられます。スピード感のあるラブシーンでのやりとりだったり、ぶつかり稽古をしているかのようなテンポ感だったりするのに、急に撫でるような時間の流れ方になったり、文字だけで時間の速さが変わって見えるのが面白いなと感じました。最初はピュアな心で出会って惹かれ合っていくまひろと道長の巡り合いがみられます。まひろは道長に対して、「あなたはこの国を変えて」という気持ちと、「何もかも捨てて自分といてほしい」という気持ちとで揺らいでる感じなんですよね。戦がほとんどない分、政治的な部分でも人間味のあるドラマとして面白くなっているなと思います。

――道長を演じる柄本佑さんは吉高さんにとってどのような存在になっていますか?

吉高:大石さん脚本の『知らなくていいコト』(日本テレビ系)で一緒だったので、最初から「戦友感」はありましたし、いてくれたら安心する頼もしい存在で、そういった関係性がある程度築けている上で、この役に巡り合えてよかったなと思っています。お互いを励まし合いながら、ワンカットが6ページぐらいのシーンもあったりして。「もうここは劇場だ! 2人でやってる気持ちで頑張ろう!」と言いながら、シリアスなシーンの前もフラットに話しかけてくれるので、こちらが緊張しないでリラックスさせてもらえる空気を作っていただいています。

――たくさんの共演者がいる現場で嬉しかったエピソードはありますか?

吉高:以前、作品でご一緒していた方と再会することが今回は多くて、続けてきたんだなという実感や感動があります。こうした大きな作品でまた出会えるというのは嬉しいことです。初めてお会いする方もたくさんいらっしゃって、私はロバートの秋山(竜次/藤原実資)さんが大好きで、特に印象に残っています。なんかもう、いるだけで面白くなっちゃって。全然笑うシーンじゃないのに、存在からユニークさが隠しきれていない感じで、魅力的な人だなと思います。何を話していいのかも分からなくて、今度またお会いする機会があるので、もうちょっと積極的にお話してみようと思っています。

――撮影が始まった当初と今とでは心持ちも違っていたりしますか?

吉高:日常になってきました。この現場が始まった時は、もっと手探りというか慎重だったんですけど、撮影がスタジオに移ってからはこれが私にとっての当たり前の日常になっていくんだろうなという感覚はあります。

――ここまでの撮影で、吉高さんの中にまひろ像というのは確立されてきている実感はありますか?

吉高:意外と時間がかかるなと思いながら、確立っていうのは最後までないんじゃないですかね。撮り切るまで、1歩ずつ成長していく感じだと思います。

――紫式部にまつわる縁の地というのは巡られたりしたのでしょうか?

内田:京都にある陽明文庫に吉高さんと大石さんと一緒に行って、『御堂関白記』という道長の直筆の日記を見てきました。1000年前の墨ですもんね。

吉高:私は全く読めなかったんですけど、大石さんが「イヤ~ン! 道長の字!」みたいに震え上がるくらい興奮して(笑)。それでまた筆が進むんだろうなと思いました。こうやって1000年前のものが残っていることがすごいなと感じました。京都周辺の紫式部の縁の地にはみんなで一緒に行きました。廬山寺はここで紫式部が物語を書いていたのかと思いました。

内田:残念ながら、紫式部については道長のように確実なものがほとんど残っていないので、どちらかと言えば京都を感じる旅のようでしたね。

吉高:でも、それもずるいですよね。残ってないから想像してしまう。亡くなって1000年も経つのに、どんな人だったんだろうって想像させる、罪な女だなと思います。この作品を観てくださる視聴者の方も、想像するじゃないですか。亡くなってからこんなに人に思われるなんて、魅力的な人だなって思います。

■放送情報
『光る君へ』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/ 翌週土曜13:05〜再放送
NHK BS・BSP4Kにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送
出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、井浦新、高杉真宙、吉田羊、高畑充希、町田啓太、玉置玲央、板谷由夏、ファーストサマーウイカ、高杉真宙、秋山竜次、三浦翔平、渡辺大知、本郷奏多、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗、段田安則
作:大石静
音楽:冬野ユミ
語り:伊東敏恵アナウンサー
制作統括:内田ゆき、松園武大
プロデューサー:大越大士、高橋優香子
広報プロデューサー:川口俊介
演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろうほか
写真提供=NHK

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