『光る君へ』国仲涼子演じるちやはに衝撃展開 子役・落井実結子の演技に魅了される
平安時代に、1000年の時を超える長編小説『源氏物語』を書き上げた女性、紫式部が主人公の大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合)が始まった。1月7日に放送された記念すべき第1回「約束の月」では、のちの紫式部である少女まひろ(落井実結子)の激動の運命が始まる。
物語終盤でまひろの母・ちやは(国仲涼子)に起こる出来事は、悲痛にして鮮烈な印象を残した。
まひろの父・藤原為時(岸谷五朗)は政治的な立場が低く、まひろたち家族は豊かとは言えない暮らしをしている。まひろは、ちやはが自分の衣を手放し食べ物に換えたことを心配するが、ちやはは「大丈夫、大丈夫。年が明けたら父上の新しいお役目が決まるのよ。父上のような博識の学者を帝がほっておかれるはずがないもの」と答える。まひろに言い聞かせるように「大丈夫、大丈夫」と繰り返すそのおおらかな声色には、為時の官職が決まる時を信じるちやはの強い心が感じられた。
ちやはは決して生活への苦労を感じていないわけではない。漢籍を読み聞かせる為時と勉学に身が入らない太郎(湯田幸希)にちやはが目をやった時にふと見せた、ため息をつくような顔にその苦労が滲み出ている。それでも、ちやはは人を思いやる気持ちを絶やさない。辞職を申し出る下女と下男に、残念そうな表情を浮かべながらも「まあ……それは仕方ないわねえ」「今までよう勤めてくれました」と労っていた。
ちやはが幼きまひろや太郎に向ける愛情深さや、下男・下女を労う優しさ、為時を思って一心に祈る姿は、とても献身的に映る。だからこそ、まひろは疑問を抱いた。この時代に、男が嫡妻のほかに妻を持つことは珍しくなかったが、まひろは、毎日願かけをしている母ではなく、ほかの女性の元へ行く為時に複雑な心境を抱く。割り切れない様子のまひろを抱きしめながら、ちやはは言う。
「私のこともいいと思ってらっしゃると思うわよ。父上の気持ちも、母の気持ちも、まひろがもう少し大人になれば分かるわ、きっと」
幼きまひろにはまだ分からない感情だが、これはのちに成長したまひろが深く感じ入るものとなるはずだ。ちやはには為時への強い思いがある。藤原兼家(段田安則)によって役目を得た為時にまひろが怒りの矛先を向けた時、ちやはは「お黙りなさい」と強い口調で叱った。まひろが身をすくめたのは、ちやはがこれまでにない剣幕だったからではないだろうか。まひろの目に映るちやはと為時の関係は相補的ではなかったかもしれない。それでもまひろは、この叱責からちやはが為時に向ける愛を感じ取ったことだろう。