『おっさんずラブ』新作放送前に前作をおさらい 牧の献身的な愛で変化していく春田

『おっさんずラブ』名シーンを振り返る

 2018年にテレビ朝日系で放送された『おっさんずラブ』が、1月1日から1月3日にかけて全話再放送される。

 「チェリまほ」の略称で親しまれた、赤楚衛二主演・町田啓太共演の『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(2020年/テレビ東京系)や、目黒蓮と道枝駿佑がW主演を務めた『消えた初恋』(2021年/テレビ朝日系)、八木勇征と萩原利久がW主演を務めた『美しい彼』(2021年/MBS・TBS系)など、近年、男性同士の恋愛を描いた多くの良作が生まれているが、「おっさん同士の恋愛ドラマ」をテーマとした本作がそれらの先駆けといえるのではないだろうか。

 「おっさんずラブ」というタイトルと、部下である春田(田中圭)に恋する乙女のようにキュンキュンしている黒澤(吉田鋼太郎)がいることから、本作は「春田と黒澤の恋愛ドラマ」でもあることは間違いないのだが、もうひとつの見どころは、春田の同僚である牧(林遣都)との間で繰り広げられる「春田と牧の恋愛ドラマ」だ。とにかく牧の、特大で激重の春田への愛を食らってほしい。

 春田は本物のダメ男だった。自他共に認めるお人好しで付き合いも悪くなく、人懐っこいが、ヘラヘラして何事も適当に考えているところがあるのだ。だからトイレットペーパーのストックがどこにあるかさえ分からないのに、家事を任せっきりにしていた母親が息子のダメさ加減に呆れて「出ていく」と言い出しても、引き止めることはなかったのである。そんな春田が変わり始めるきっかけとなったのが牧だ。牧の春田へのアプローチは言葉も行動もストレートで嘘がない。本作ではひょんなことから春田と一緒に暮らし始めて、次第に思いを募らせていった牧が「童顔で巨乳が好き」という春田に「巨乳じゃなくて巨根じゃダメですか?」と言い、熱いキスをする場面がある。冷静に考えて、それまで恋愛対象が女性ばかりだった春田に対してそのセリフを言ったところで、「いいよ」という展開にはならないと思うのだが、そんなことが気にならなくなるほど、牧のアプローチには春田が好きだという気持ちが込められていることがわかるのだ。真剣な顔で、まっすぐに思いを伝えられて、春田の心が揺れ動かないはずがない。春田がダメ男“だった”と過去形にしたのは、牧の献身的で温かな、でも本気の愛に触れて、春田が自分の気持ちに向き合い始めたからだ。

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