『SPY×FAMILY』初登場1位も先行き不安な正月興行

先行き不安な正月興行

 12月22日に『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』が公開されて、正月映画の有力作が出揃った12月第4週の動員ランキング。その『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』はオープニング3日間で動員86万6000人、興収12億2400万円を記録して初登場1位に。参考までに、東宝が今年公開したアニメーション作品で最大のヒットとなった『名探偵コナン黒鉄の魚影』(興収約138.8億円)のオープニング成績と比べると、興収比で約39%。続くヒットとなった『君たちはどう生きるか』(現時点で興収約86.6億円)のオープニング成績と比べると、興収比で約75%。いずれの作品とも観客層が異なるのは前提としても、一部では今年の正月映画の本命として興収100億円クラスのヒットが期待されていたことをふまえると、迫力のない数字でのスタートとなった。

 2023年の映画興行の概況に関しては、年が明けて1月に日本映画製作者連盟から詳細が発表されるわけだが、今年に入ってから公開された新作映画に限ると、トップ10のうち1位の『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(興収約140億円)と4位の『キングダム 運命の炎』(興収約56億円)と5位の『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』(興収約53.8億円)を除く7作品が東宝の単独配給作品。しかも『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』は東宝東和配給、『キングダム 運命の炎』は東宝とソニーの共同配給、『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』は東和ピクチャーズの配給と、なんと10作品すべてが東宝、及び東宝系の配給会社が関連した作品となっている。「アニメーションが実写を圧倒する時代」や「邦画が洋画を圧倒する時代」などと言われるようになって久しいが、少なくとも2023年に関しては、何よりも「東宝系の配給作品が他社の配給作品を圧倒した1年」だった。

 おそらく先週末のトップ5に並んだ作品は、今後順位の変動こそあれ、そのまま2023年から2024年にかけての正月興行のトップ5作品となる可能性が高いだろう。上から、邦画アニメーション作品、洋画アニメーション作品、邦画実写作品、洋画実写作品、邦画アニメーション作品と、近年では珍しくバラエティに富んだラインナップ。そして重要なのは、上から東宝、ディズニー、松竹、ワーナー、東映と、ここにきて東宝の独り勝ちイヤーだった2023年の様相に変化が表れてきたことだ。

 ここまで東宝の独り勝ちとなってきた要因は、これまで最大のライバルだったディズニー作品のコロナ禍以降の失速だった。そのディズニーの『ウィッシュ』は、先週末も堅調に2位につけている。しかし、各社による健全な市場競争が戻ってくる兆しが見えてきたことよりも、興行サイドにとって悩ましいのは、『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』も『ウィッシュ』も、例年の正月映画と比べて勢いが感じられないことだろう。

■公開情報
『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』
全国公開中
原作・監修・キャラクター原案:遠藤達哉(集英社『少年ジャンプ+』連載)
出演:江口拓也、種﨑敦美、早見沙織、松田健一郎ほか
監督:片桐崇
脚本:大河内一楼
キャラクターデザイン:嶋田和晃
サブキャラクターデザイン:石田可奈
総作画監督:浅野恭司
音楽プロデュース:(K)NoW_NAME
音響監督:はたしょう二
アニメーションアドバイザー:古橋一浩
制作:WIT STUDIO×CloverWorks
配給:東宝
製作:「劇場版 SPY×FAMILY」製作委員会
©2023「劇場版 SPY×FAMILY」製作委員会 ©遠藤達哉/集英社

『今週の映画ランキング』(興行通信社):https://www.kogyotsushin.com/archives/weekend/

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