『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』が追求した“子ども視点” 軽快なギャグにほっこり

『劇場版 SPY×FAMILY』の子ども視点

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、麻辣ピーナッツが好物の花沢が『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』をプッシュします。

『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』

 「大人も子どもも楽しめる」。最近のアニメ映画には、必ずと言っていいほどこの枕詞がついているように思う。『名探偵コナン』や『ONE PIECE』といった長寿アニメの劇場版が右肩上がりにヒットしている背景には、大人も引き込むような深いメッセージ性や、“推し活”のために何度も劇場に足を運びたくなるような人気キャラクターの存在がある。

 一方で、もはや大人をメインターゲットに据えているように見える作品も少なくない。8月に公開された『しん次元! クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦』は、『モテキ』の大根仁がメガホンを取ったことで、かつて子どもだった大人たち、特にアラサー世代へのエールの側面が強くなっていた。

 そして、現在公開中の『ウィッシュ』もまた大人向けのサービス精神に富んだ作品だ。上記で挙げた日本アニメの潮流とは異なるが、ディズニー100周年記念として制作された同作は、歴代のディズニー作品へのオマージュが満載で、その元ネタを知っている人ほど楽しめる内容に仕上がっている。

 大人も楽しめる。いや、むしろ大人のほうが楽しめる。そんなアニメ映画が持てはやされるなかで、『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』(以下、『劇場版 SPY×FAMILY』)は意外なほどに、子どもというターゲットに真摯に向き合った作品だった。

 『劇場版 SPY×FAMILY』は、脚本家・大河内一楼による完全オリジナルストーリーで、その名前が発表された際には、アニメファンから大きな反響があった。大河内といえば、『コードギアス 反逆のルルーシュ』『機動戦士ガンダム 水星の魔女』で知られ、“政治”や“戦争”といったテーマを風刺を交えながら描くことの上手い作家だ。東西の冷戦という設定が下地にある『SPY×FAMILY』を、大河内ならいくらでも大人向けに描けたと思うが、その作家性は原作へのリスペクトを持ってアジャストされている。

 例えば、ギャグ。本作には視覚的にわかりやすく、いい意味でくだらないギャグが多い。ヨルに叩かれたロイドが頬にどデカいたんこぶを作るシーンや、トイレを我慢するアーニャが妄想の世界で「うんこの神」に出会うシーンなど、往年の『クレヨンしんちゃん』映画のような軽快なギャグが散りばめられている。

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