岡本多緒、『葬送のカーネーション』を絶賛 「どんどんと引き込まれる力のある作品」
2024年1月12日に公開されるベキル・ビュルビュル監督作『葬送のカーネーション』のスペシャルトーク付き先行試写会イベントが12月19日に都内で実施され、俳優・監督・モデルの岡本多緒が登壇した。
本作は、荒涼とした冬景色のトルコ南東部を舞台に、亡き妻を葬るため、棺を背負い歩き続ける老人と孫娘の姿が描いた現代社会の寓話。
舞台は、冬景色のトルコ南東部。孫娘ハリメを演じるのは、本作が初の演技経験となった、シリアで生まれ戦争のためトルコに移住したシャム・シェリット・ゼイダン。年老いたムサを演じるのは、トルコで映画、舞台、テレビドラマで活動する俳優のデミル・パルスジャン。ビュルビュル監督は小津安二郎を敬愛し、本作で描かれている「死と旅」というテーマも、数々の小津映画から受け継いだレガシーだと語っている。
映画の率直な感想について聞かれた岡本は、「ほとんどセリフがない映画で、物語が進むにつれて、主人公の少女ハリメを演じるシャム・シェリット・ゼイダンさんの、初めての映画出演とは思えないような演技力に驚かされました。登場人物たちの旅の行く道とともに、どんどんと引き込まれる力のある作品です」と絶賛。
本作のように、セリフの少ない映画の魅力をどう捉えるか問われると、「偉そうなことは言えないんですが……」と謙遜しながら、「日本の映画は説明セリフが多く、『言い過ぎ!』と思ってしまうことが多いです。日本人は“行間を読む文化”があるのに、なぜ映像作品になるとこんなにセリフで埋め尽くされるのか……不思議ですよね。もちろんそれが上手く働いている作品もありますが、この映画のように、セリフがほとんどなく、俳優の行動や仕草で物語を表現し、映像の美しさで全てを語り掛けるスタイルには『やられた!』と思います。こういう作品に出演できたらとても光栄だと思います」と、その演出に感銘を受けたことを明かした。
海外の映画演出についての話から、2013年に『ウルヴァリン:SAMURAI』でハリウッド女優デビューし、数多くの海外作品に出演してきた岡本が、日本に帰国し、俳優のみならず映画監督にもチャレンジしようと思ったきっかけについて聞かれると、「ハリウッドでデビューをさせていただきましたが、ハリウッドで出演してきた作品は自分が観て育ったタイプの作品ではありませんでした。『なんか違うな?』と思ってしまう瞬間があって……。私はヒューマニティのある作品が好きだ! と思い切って、日本に帰国し、俳優として、監督として、新しくチャレンジしようと決意したんです」と、新たなキャリアをスタートさせた理由を述べた。
岡本は俳優やクリエイターとして活躍する一方で、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の定期支援者として活動を行い、世界に向けて発信を続けている。個人としてもチベット難民を義理の母に持っており、本作に事前に寄せていたコメントには、「ずっと義母のことを考えて観ていました」と綴っており、映画の中で描かれた“難民”というテーマについて、「遠い国のお話ではなく、自分の身にも起きる出来事であると思いながら観てほしい」と訴えた。
「私の義母がチベット人で、大変な幼少期をすごしてきた人です。義母に出会ったとき、歴史の中で日本がアジア諸国にしてきたことを、どれだけ学校で教えていないのか、ということを実感しました。今、世界で起きていることは、人間誰もが持っているかもしれない狂気から起きていることなのかもしれない。人種という偏見を取り払い、この映画で描かれていることは、自分のことでもあると思いながら、この映画を“今”、観てほしいです」と、現代社会に生きる人々に強く訴える作品であることを力強く主張。
最後に本作について、「人間性を忘れずに生きていかないといけない。そんなことを心に刻んでくれる映画です。ぜひお友達や家族など、大切な人におすすめしてください!」とコメントし、イベントを締めくくった。
■公開情報
『葬送のカーネーション』
2024年1月12日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、恵比寿ガーデンシネマほかにて全国順次公開
監督 : ベキル・ビュルビュル
脚本 : ビュシュラ・ビュルビュル、ベキル・ビュルビュル
出演:シャム・シェリット・ゼイダン、デミル・パルスジャン
海外セールス:Alpha Violet
配給:ラビットハウス
協賛:トルコ文化観光省/トルコ国営放送局
2022/トルコ・ベルギー/トルコ語・アラビア語/16:9/5.1ch/カラー/103分
©FilmCode
公式サイト: https://cloves-carnations.com
公式X(旧Twitter):@masuda8251