Netflix『クレイジークルーズ』の“振り切れ方”はあり? “坂元裕二らしさ”と現実とのズレ
『クレイジークルーズ』の配信に合わせて行われたNetflixのサイトに掲載されたインタビューで坂元は、テレビドラマの制作環境も含め世の中があまりにも「清貧」みたいな方向になっているため、その抵抗として煌びやかな世界を描いて見たかったと語っている。(※)
テレビドラマ出身のクリエイターがNetflixで作品を作ると、テレビドラマでは作れない日本社会の暗部を描くようなセンセーショナルな題材や、エロや暴力といった過激な表現を志向する傾向が強いのに対し、坂元が選んだ題材は、トレンディドラマ的な煌びやかな世界を描いたスクリューボールコメディだった。
あえて明るい題材を選んだことは近年の作風を考えると理解できるのだが、ここまで振り切ったものになるとは意外だった。
本作が経済的に貧しくなってしまった日本社会とテレビドラマに対するカウンターとなっていることは理解できるのだが、今の貧しい日本の価値観にどっぷりと浸かっている筆者には、本作の煌びやかな世界は居心地が悪く、うまく咀嚼できない部分も多い。
優れた作家は時代の二歩先、三歩先を描くものだが、『クレイジークルーズ』の煌びやかな世界も、数年後に観たら「こういうことだったのか」としっくりくるのだろうか?
これから続く坂元のNetflix作品の動向とともに、本作の「観え方の変化」にも注目していきたい。
参照
※ https://about.netflix.com/en/news/in-love-and-deep-water-screenwriter-yuji-sakamoto-interview
■配信情報
Netflix映画『クレイジークルーズ』
Netflixにて、世界独占配信中
出演:吉沢亮、宮﨑あおい、吉田羊、菊地凛子、永山絢斗、泉澤祐希、蒔田彩珠、岡山天音、松井愛莉、近藤芳正、宮崎吐夢、岡部たかし、潤浩、菜葉菜、大貝瑠美華、眞島秀和、林田岬優、光石研、長谷川初範、高岡早紀、安田顕
脚本:坂元裕二
監督:瀧悠輔
助監督:李相國
音楽:村松崇継
撮影:谷川創平
美術:花谷秀文
照明:李家俊理
VFX:牧野由典
スタイリスト:BabyMix
ヘアディレクター:松浦美穂
エグゼクティブプロデューサー:岡野真紀子
プロデューサー:有重陽一、深津智男
制作プロダクション:日活、ジャンゴフィルム
企画・製作:Netflix
Courtesy of Netflix © 2023
Netflix作品ページ:https://www.netflix.com/クレイジークルーズ