坂元裕二の“ライブ感”はしばらくお預け? Netflixとの5年契約がもたらすものを考える
坂元裕二がNetflixと5年契約を結び、複数の作品を制作して独占配信することが発表された。
坂元裕二は日本を代表する脚本家。現在公開中の是枝裕和監督作『怪物』の脚本で、カンヌ国際映画祭のクィア・パルム賞と脚本賞を受賞したことが記憶に新しい。
1987年の「第1回フジテレビヤングシナリオ大賞」の大賞を19歳で受賞して脚本家デビューした坂元は、1991年に脚本を執筆した連続ドラマ『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)が高視聴率を獲得した。その後、2010年代に入ると坂元の作家性は本格的に開花。『Mother』(日本テレビ系)を皮切りに、『それでも、生きてゆく』(フジテレビ系)、『カルテット』(TBS系)、『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系)、『初恋の悪魔』(日本テレビ系)といった連続ドラマの傑作を次々と執筆する。どれも高視聴率の作品ではないが、ドラマファンからは熱狂的な支持を受けている。
一方、映画では、脚本を執筆した土井裕泰監督作『花束みたいな恋をした』が2021年に劇場公開され、38.1億円の興行収入を記録。
本作は韓国や中国でも上映されてヒットした。『Mother』を筆頭に坂元のドラマは海外でもリメイクされ大ヒットしていたが、『花束みたいな恋をした』のヒットと『怪物』が脚本賞を受賞したことによって、国内外の映画ファンにも名前が知られるようになったことは間違えないだろう。
つまり近年の坂元は、国内テレビドラマの枠を超えて、海外でも評価される脚本家になりつつある。おそらく今後は、村上春樹に匹敵する日本を代表する作家として海外では評価されていくのだろう。
そう考えると、Netflixとの5年契約は当然の結果だと言える。配信映画『クレイジークルーズ』の脚本執筆がすでに公表されていたため、どの時点で契約が決まったのかはわからないが、今回の脚本賞が決定打となったことは間違いないだろう。
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すでに2024年に土井裕泰監督作『片思い世界』の劇場公開が控えているため、今後5年間、Netflix以外の場所で坂元が脚本を書いた作品が観られなくなるということはないとは思うのだが、民放地上波のテレビドラマと違い、時間と手間を割くことができて、社会的なテーマにも果敢に挑むことができるNetflixで脚本を書けるのであれば、そちらを主戦場とするのは当然だと言えよう。テレビドラマ業界にとっては大きな喪失ではあるが、これもまた時代の流れである。
一方、Netflixの立場から見た時に、坂元との5年契約はどのような意味を持つのであろうか?