『いちばんすきな花』は人間関係の“淀み”を見逃さない 美鳥の“4人と自分1人”が突き刺さる

『すき花』は人間関係の“淀み”を見逃さない

 たしかに、美鳥も4人のことは好きだ。でも、それぞれ別の顔を知る4人が集まる場に、どんな顔をして向かえばいいのだろうか、と彼女が戸惑ったのも無理はないと思った。そこに追い打ちをかけるように、美鳥が初めて“帰りたい“と思えた家は、今では椿と3人にとってのホームになっていた。4人の会話を聞けばどれだけこの家で温かな時間を過ごしてきたのかが透けて見える。同時に、そこに自分はいなかったのだという事実も。

 ダイニングテーブルの席、色違いのマグカップ、次に誰が買うか決まっている牛乳、ストック場所を把握しているキッチンペーパーにゴミ袋……そのどれもが当たり前に4人の絆を示していく。それは、微笑ましく見届けてきた視聴者さえも疎外感を抱いてしまいそうなほどの仲睦まじさ。美鳥がどれだけ入りにくかったか想像に難くない。

 4人は純粋に美鳥となら5人でも楽しい時間が過ごせるのではないかと思ったのだろう。だって、他ならぬ大好きな美鳥だから。しかし、結果として美鳥に「4人と自分1人」という居心地の悪さを感じさせてしまった。その構図は、もともと4人が感じていた「大多数と自分1人」という居心地の悪さを感じていたものと重なって見えたのが心をひりつかせる。

 多くの人が疑問を持つことなく2人組を作れることや、ポジティブワードに勇気づけられていることに批判的だった4人。そんな繊細に物事を見つめてきていたつもりの4人でも、相手に「これは違う」と思わせてしまうことがあるということ。美鳥が、また4人に大切なことを教えてくれたことのように思えた。

 4人の友情は4人だから築かれたものだ。「大多数と自分1人」の疎外感にモヤつき、今もなお悩み続けている4人。彼らに対して、もはや自分なりに「1人と1人」ならうまくいくのだという結論に達している美鳥とでは、同じ話題では盛り上がることができないのかもしれない。その違和感をうやむやにせず、ゆくえに話すことができるところも美鳥が4人に比べて、達観しているところではないだろうか。

 「みんなもっと他人に無関心に生きたらいいのにね。判定したくて仕方ないんだよね」。そんな美鳥の言葉がリフレインする。息苦しいと思ったら、その都度環境を変えて、試行錯誤してきた美鳥。どれだけ傷つけられても、自分なりの居心地の良さを感じられる場所を諦めなかったとも言える。そんな彼女からすれば、「いつも傷つけられる側にいる」といってすぐに決めつけてしまうのも、危うい間違い探しのようなものなのかもしれない。

■放送情報
木曜劇場『いちばんすきな花』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:多部未華子、松下洸平、神尾楓珠、今田美桜、齋藤飛鳥、白鳥玉季、黒川想矢、田辺桃子、泉澤祐希、臼田あさ美、仲野太賀ほか
脚本:生方美久
プロデュース:村瀬健
演出:髙野舞
音楽:得田真裕
主題歌:藤井風「花」(HEHN RECORDS / UNIVERSAL SIGMA)
制作・著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/ichibansukina_hana/
公式X(旧Twitter):@sukihana_fujitv
公式Instagram:@sukihana_fujitv

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