『ブギウギ』聴衆の涙を誘うスズ子の絶唱 戦争への憤りが込められた「大空の弟」

『ブギウギ』聴衆の涙を誘うスズ子の絶唱

 『ブギウギ』(NHK総合)第49話が放送された。茨田りつ子(菊地凛子)との合同コンサートでスズ子(趣里)が披露した歌は満場の聴衆の涙を誘った。

 羽鳥(草彅剛)の呼びかけで実現した久しぶりのステージで、スズ子が1曲目に選んだのは新曲「大空の弟」だった。梅吉(柳葉敏郎)や観客が見守る中、二村(えなりかずき)が奏でるピアノのイントロに導かれるように、スズ子は思いを歌に託した。

<かねてより我らを苦しめた憎い顔した敵軍ども/ひごろ鍛えたこの腕で重い小銃抱え込み/がぁんと突撃しています/○○隊にて六郎より>

 戦地から届いた手紙をモチーフにした楽曲は、続いて日本で帰りを待つ姉の心情を綴る。軍事機密のため所属部隊や居場所を知らせる語句は「○○」と表記され、弟の行方を知ろうにも手がかりすらつかめない。家族の悲痛な心境を<○○○ではわからない>と表現した。

 声を震わせ、目に涙をためて天国の六郎(黒崎煌代)に届けとばかり熱唱するスズ子は、歌い終えて泣き崩れてしまう。羽鳥の一言で我に返り、客席に目をやると死んだはずの六郎がいた。ほほ笑む六郎を視界に認めたスズ子は、気力を振り絞ってマイクに向かう。そこには、喝采を浴びるいつもの福来スズ子がいた。

 “幻の曲”と呼ばれた「大空の弟」は2019年に楽譜が発見され、陽の目を見ることになったナンバーだ。ドラマ版で改変された歌詞は、一見すると愛国心を高揚させる戦時歌謡そのものである。しかし、丁寧に読み解いていくと、戦争によって引き裂かれた肉親の叫びが行間から浮かび上がる。

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