『どうする家康』松本潤が“すべての地獄”を背負う家康に あまりに辛い千姫の境遇

『どうする家康』“全ての地獄”を背負う家康

 豊臣との戦に踏み切ることになった家康もまた、大きな苦しみを引き受ける。本多正信(松山ケンイチ)から、千姫を案じる秀忠が総大将に名乗りをあげていることを聞かされ、「秀忠は戦を知らん」と言う。

「知らんでよいと言っておる」
「人殺しのすべなど……。覚えんでよい」

 家康は、弱さを素直に認められる息子・秀忠を大切に思っている。家康はこの戦で、徳川が背負うことになるであろう汚名の全てを引き受けるつもりだ。

 家康は大筒による攻撃を仕掛けた。秀頼を狙う、すなわち千姫に害が及ぶことも辞さない構えに秀忠は動揺する。「戦が長引けば、より多くの者が死ぬ。これが僅かな犠牲で終わらせるすべじゃ」「主君たるもの……身内を守るために多くの者を死なせてはならぬ」と家康は淡々と述べる。しかし、天守へ向かって逃げることを見込んで大筒を撃ち続ける父の姿に、「やめろ! こんなの戦ではない!」「父上! もうやめろ!」と秀忠は涙ながらに訴えた。

 泣き叫ぶ秀忠とは裏腹に、家康は大坂城を無感情に見つめ、ボソリと呟く。

「これが戦じゃ」
「この世で最も愚かで……。醜い……。人の所業じゃ……!」

 家康は苦虫を噛み潰したような顔でこの言葉を吐いた。“この世で最も愚かで醜い人の所業”を、誰よりも怖がり、嫌がっていたはずの自分が、戦なき世のために砲撃を仕掛けているという皮肉。あの表情は、安泰な世のために戦を続ける自身への憤りだろうか、悔恨だろうか。

 かつて長篠・設楽原の戦いで、信康(細田佳央太)が「これが……戦にございますか……?」と愕然としていたことが思い出される。家康の言葉は信康への応えだ。そして秀忠に信康のような最期を迎えさせまいとする父の思いでもある。泣きじゃくる息子に冷酷な現実を突きつけることになったが、家康はこの地獄を全て抱え込み、あの世まで持っていくつもりだ。

 顔をくしゃくしゃにして激しく泣く秀忠の横で、家康は顔をこわばらせたまま。家康は今、豊臣との戦いを終わらせるため、愛する孫娘のいる城を狙い続けるという地獄を味わっている。

■放送情報
『どうする家康』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:松本潤
脚本:古沢良太
制作統括:磯智明
演出統括:加藤拓
音楽:稲本響
写真提供=NHK

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