『攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間』を名作映画と並べて解説 初心者も必見の“現代性”

『攻殻機動隊』新作を名作映画と並べて解説

 また、補足するならば劇場版として再構成したことでより「わかりやすい」「物語が飲み込みやすい」仕様にもなっている。アニメシリーズ12話×2シーズン分を2本の映画に圧縮しているため、観客においては時間的な負担も軽減されている、というのも重要なポイントであろう。さらに、藤井監督とのタッグで知られる編集技師・古川達馬の演出/編集も効いており、映画的なダイナミズムを生み出している点も個人的に推したい要素だ。

 『攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間』は、冒頭からトグサの過去? と思しき描写がフラッシュバック的に挿入されていくが、牢屋や雪原、電車の中までハイテンポで切り替わっていく魅せ方が多彩で、一気に本作のリズム感に飲まれていく。また、「音でつなぐ」編集の上手さも光り、カーチェイスや銃撃戦など、スピーディに展開するシーンでも銃声や爆発音、駆動音などが連結しているためカットが続けざまに切り替わるのが臨場感と気持ちよさを生み出している。古川はデヴィッド・フィンチャー監督の新作『ザ・キラー』(本作も音のつなぎが抜群に上手い)を「音の洪水 人間味溢れるキャラクター 澱みないカットの積み重ね」と評していたが、本作での仕事ぶりにも随所にセンスを感じさせる。

 配信シリーズを単に劇場公開するのではなく、映画的な強化点を実装させ、“詳しくない”層にも届くようなカスタマイズを施した本作。藤井監督×古川のエッセンスでもってチューニングされたことで、『攻殻機動隊 SAC_2045』が持つ面白さと現代性にリンクする動線が引かれた。これを機に、「攻殻機動隊」という壮大なコンテンツの“海”に飛び込む人々も出てくることだろう。

■公開情報
『攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間』
11月23日(木・祝)より3週間限定公開中
キャスト:田中敦子、中博史、大塚明夫、山寺宏一、仲野裕、大川透、小野塚貴志、山口太郎、玉川砂記子、潘めぐみ、津田健次郎、曽世海司、喜山茂雄、林原めぐみ
モーションアクター:草薙素子、川渕かおり、荒巻大輔、曽世海司、笠原紳司、岡田地平、武井秀哲、山城屋理紗
原作:士郎正宗『攻殻機動隊』(講談社KCデラックス刊)
総監督:神山健治、荒牧伸志
監督:藤井道人
演出・編集:古川達馬
脚本:神山健治、檜垣亮、砂山蔵澄、土城温美、佐藤大、大東大介
キャラクターデザイン:Ilya Kuvshinov
CGディレクター:松本勝
3Dキャラクタースーパーバイザー:松重宏美
プロダクションデザイナー:臼井伸二、寺岡賢司、松田大介
モデリングスーパーバイザー:田崎真允
バックグラウンドモデリングスーパーバイザー:市川聡
リギング、キャラクターFXスーパーバイザー:錦織洋介
リギングスーパーバイザー:井上暢三
モーションキャプチャディレクター:宇土澤秀公
レイアウトスーパーバイザー:崔佑碩
アニメーションスーパーバイザー:山口雄也
エフェクトスーパーバイザー:清塚拓也
ライティング、コンポジットスーパーバイザー:高橋孝弥
テクニカルスーパーバイザー:大桃雅寛
音楽:戸田信子、陣内一真
サウンドデザイナー:高木創
主題歌:millennium parade「Secret Ceremony」「No Time to Cast Anchor」
音楽制作:フライングドッグ
主題歌協力:ソニー・ミュージックレーベルズ
制作:Production I.G、SOLA DIGITAL ARTS
製作:攻殻機動隊2045製作委員会
配給:バンダイナムコフィルムワークス
©士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊2045製作委員会
公式サイト:www.ghostintheshell-sac2045.jp
公式X(旧Twitter):@gitssac2045

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