『美人骨』周生辰はアレン・レンのハマり役に 一途で優しいまなざしに心掴まれる

『美人骨』周生辰はアレン・レンのハマり役に

 もし今、目の前にいる愛しい人と自分が実は前世からの縁で繋がっており、それも結ばれずに散った悲恋の相手だったとしたら……そんなことを想像するだけで胸がキュッと締め付けられるような気持ちになるのではないだろうか。

 11月20日よりCS放送LaLa TVで放送される中国ドラマ『美人骨』は、まさにそんな切なさのど真ん中を付いてくるドラマだ。2021年に中国で放送され、その美しすぎるバッドエンディングから「中国全土が泣いた」と話題騒然となった本作。その大きな特徴は、“前世”パートの『美人骨~前編:周生如故(しゅうせいじょこ)~』と、『美人骨~後編:一生一世(いっせいいっせ)~』の“現世”パートにわかれて、たっぷりと時間をかけて運命の恋が描かれることだ。

 タイトルにある「美人骨」という言葉。日本語ではあまり聞き慣れない単語だが、表面的な美しさのみならず、優れた気骨・風格といった人間の内なる魅力も併せ持った人という意味。その「美人骨」と称されるのが、人気俳優のアレン・レンが演じる小南辰王こと周生辰(ジョウション・チェン)だ。

 『美人骨~前編:周生如故~』の舞台は、北魏の時代まで遡る。都から遠く離れた西州で、百戦錬磨の将軍として目覚ましい活躍を見せていた周生辰。武芸は神業級で、心も善良とあって、世界で唯一の「美人骨」として民から慕われていた。

 だが、そんな非の打ち所のない人物には、妬みや嫉みがつきまとうのは世の常。もともと皇帝の弟として生まれた周生辰だったが、その恵まれた素質を面白く思わない皇族たちも多数存在し、周生辰を悩ませる。

 そこで、無用の争いを避けるべく早々に皇室の姓を捨て、辺境を守るという使命を全うする人生を選ぶのだが、それでも人気と実力を誇る周生辰を脅威に感じた皇族たちの言いがかりから逃れるため、彼は生涯誰も娶らず子も設けないという誓いを立てるのだった。

 そう、この物語を突き進めるのは周生辰を取り巻く数奇な運命だ。彼は自分のやるべきことをやるという、至ってシンプルな生き方を貫く。しかし、周囲が彼のことをどうしても放っておかないのだ。どんなに粛々と過ごしても、より人々の注目の集まるところへ、さらなる影響力のあるところへと、気づいたら引っ張り出されてしまう。ときには理不尽な権力争いに巻き込まれたり、本意ではない形で周りが巻き込まれていくのを、なんとかするために苦しい条件をのむこともある。

 こうして文字にすると振り回されてばかりのようにも感じられるが、その都度賢明な判断を下す彼の姿は、決してブレているようには見えない。むしろ貫くべきものの本質を掴み、そして本当に守るべきもののために、苦渋の決断をする周生辰を応援せずにはいられないのだ。この華がありながらも苦悩の絶えない周生辰の生き様を、アレン・レンが説得力抜群に演じている。それは、ひょっとしたら彼自身の経歴と共鳴するところがあるからではないだろうか。

 アレン・レンの人生を振り返ると、その勝負強さと強運ぶりに感服してしまう。6歳で卓球を始めると将来を嘱望されるほどの腕前を誇るまでに成長。東京オリンピック金メダリストの陳夢選手と同じチームに所属して、切磋琢磨した仲だというから驚きだ。怪我をしていなければ、もしかしたら俳優ではなくアスリートとして、その名を轟かせていたのではないか。

 残念ながら怪我をきっかけに卓球選手となる道は途絶えたものの、空港勤務という道に進んだアレン・レン。そして、休暇を利用してもともと好きだった音楽・ダンスのコンテストに参加すると、今度は芸能の道が開けていくのだ。2011年には中韓ボーイズグループの練習生としても活動。デビューを目前に2014年に帰国すると、ドラマの主役に抜擢される形で俳優デビューを果たす。

 その後の活躍ぶりは、次々と主演作のヒットに恵まれていることでも明らか。そうした数々の勝負の場を経験してきたことを思うと、周生辰の役を通じて醸し出される頼もしさや芯の強さに納得せずにはいられない。

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